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十二人の怒れる男のcinemakinoriのレビュー・感想・評価

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
4.5




“偏見は真実を曇らせる”






三谷幸喜がオマージュして脚本にした傑作【十二人の優しい日本人】の元ネタ。



1957年のモノクロ映画にここまで惹きつけられるとは、、、

脚本は勿論なのだが、
カメラワーク、配役、演技、演出といった多角度を眺めても非を論じる理由が見当たらない。
ワンシチュものでここまでヒューマンドラマ×サスペンスを堪能出来る本作が、世界中で讃えられるのも納得の内容。



先ず、設定が秀逸。
民主主義の“体現”とも言うべき十二人の陪審員達が密室で有罪か無罪かを論議する。
この至ってシンプルな設定にこそ普遍や私情や討論や反転や同意、そして限られた空間の中で先の見えない時間経過における苛立ちなどが相まって、話し合いとも喧嘩とも言える実に人間らしいやり取りが繰り広げられる。

陪審員たる者、同調も私情もタブーな筈なのに、見知らぬ人間同士の討論ゲームがいざ始まれば、そこはやっぱり人間味に溢れたやり取りが付きものとなる。
その人間らしさの部分を、敢えて陪審員という設定で演出している点がこのワンシチュエーション映画にもかかわらず飽きのこない最大の理由かと。


仕切り役、感情論者、無責任者、移民者、ビジネスマン、レペゼンスラム、長老者、論理主義者、、、
多様且つ全く見知らぬ者同士が殺人容疑にかけられている18歳の少年の罪の有無を話し合う事による、人生の縮図とも言うべき二転三転が堪らなく面白い!


三谷幸喜脚本の【12人の優しい日本人】もかなり大好きな作品で、もう何回観たか覚えていられない程だが、それでも何回観ても面白い。本作も同様。
こんなにシンプルで場面展開皆無な映画なのに。
だった90分ちょいでここまで事件現場の状況説明や人物説明も含めて上手に纏めている映画も他に類が浮かばない。
しかもそれが1957年って、、、スゲェ映画だなこれ。




個人的に一番グッとくる陪審員は、ずっとロジカルに汗ひとつかかず議論していたのに、最後の最後に汗を拭く場面に陥る4番?の陪審員。
皆さんは?










“その可能性はある”
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