このレビューはネタバレを含みます
モチーフの反復によるテーマの表出。これまでほどストーリーが強くない分、技法の精巧さに息を巻いた。寅屋で演説する寅さんの後ろで次々と流れるSE、徹頭徹尾ピエロとなるタコ社長、同フレーム内で舞台のように入れ替わる登場人物。登場人物が多いけどそれが渦のようにしっかり回る。泉ピン子の二度目の登場の仕方が巧くて声が出た。別れを密かに呪う出会いではなく、ハナから別れる前提の出会いばかりな今作は、まるで掻き立てられるように寅さんが旅に出て終わる。センチメンタルよりもブルージーが勝つ。ひとところに止まる人生よりも、そこにまだ知らぬ何かがあるように。でもまあ、帰る場所があって初めて旅でもあって。大原麗子めちゃくちゃかわいい。