Habby中野

3人のアンヌのHabby中野のネタバレレビュー・内容・結末

3人のアンヌ(2012年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ホン・サンスの到達点的作品。メタフィクションが、同じ人物、同じ場所で並列的に描かれる。捉え方としてはマルチバース。しかしそこに”明確な違い”はなくまた”明確な同一性”ももちろんない。メタフィクションだが、それがメタフィクションであることの証左さえない。反復ではなく、直列でもなければ並列とも言いきれない。互いの位置関係は無視して重なるいくつかの世界と物語。それらは干渉し合うこともなく、ただ”少し似た”形でそこにそれぞれ存在し合う。この映画の存在においてのみ。そこにいるわけではない我々にとって、どれが本当かやそれぞれの登場人物がどうなるかなどは関係がない。あるのはただその反動によって強く認められるこの映画の映画としての振る舞いだけだ。この映画は、自身の存在だけでそれを保証する、絶対的な映画となっている。もはや、観る者さえ必要ないのかもしれない。この”存在の保証”こそが『エブエブ』が取りこぼした重大なもののような気がしている。
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