Habby中野

新感染 ファイナル・エクスプレスのHabby中野のネタバレレビュー・内容・結末

3.2

このレビューはネタバレを含みます

KTX内でのゾンビパニック……発想はおもしろいけど映画的にはダメ(と感じた。個人の感想だょ)。これはたぶん上手さの裏返しなんだろうけど、導入が丁寧すぎて冒頭から冷めっぱなし。どう複雑におもしろくわかりやすく描くか、を試行錯誤しながら配置したのだろうなという周到な準備からのハイ、始まりますよとでも言うような発車。ゾンビの動きも計算されつくしていて、雑な早送りでの挙動の演出や”標的”である人間を無視してカメラを意識してしまう演者の振る舞い。主人公の設定も、最初咄嗟の聡明さを発揮するのでこれからそれを武器に戦うのかと思ったらそうでもなく馬鹿だったりまた思い出したように聡明だったりしていて丁寧な準備したわりには一貫性がない。これを人間の特有の揺らぎというには人間を知らなすぎるのではないか。
そしてカメラ。ヨリのショット、それからその状況のヒキのショット、それらを編集で一連にして……という制作意図と過程が見え透いている。人物の息遣い聞こえる緊迫感ある位置にいたと思ったら次のショットではそこから2m離れたところにいたりする。舐めるな、お前の移動は全て見えている。
というように全編に亘ってあらゆる制作者の影が見えて、説得力がまるでない。そしてこの映画においてその姿が見えることには一切の意味がない。この映画は、いったいどこにあるのだろうか。100年前の映画に、あなたたちの姿は映っていなかったはずだ。
ついでにラストシーン、真っ暗なトンネルの中で大量の人(軍人)が走ってきたら経験上絶対にゾンビやと思い、発狂しまた絶望し崩れ落ちるだろう。それを知らん顔してカタルシスあるラストにするなんて、あり得ない。
素晴らしいところも十分にあったはずだけどもあまり思い出せずにいる。ただゾンビに噛まれる箇所に”腕”が圧倒的に多いのは、人間の構造のリアルを感じさせて良かった。
Habby中野

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