TAK44マグナム

デルタ・フォースのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

デルタ・フォース(1985年製作の映画)
3.7
「チャック・ノリスは死を恐れてなどいない。死が彼を恐れているのだ」
〜チャック・ノリスの真実より〜


とにかくB級のお題を大作風味に調理して、主にヴァンダムやスタローンのアクション映画で強い印象を残した映画製作会社と言えばそう、みんな大好き!
キャノンフィルムズ!
創始者のメナヘム・ゴーランとヨーラン・グローバスがイスラエル出身だからなのか、本作はイスラエルが国をあげて完全バックアップを敢行!
アラブゲリラが猛威を振るう舞台も全てイスラエルで撮影しとります。
そして、イスラエルといえば最強美女ガル・ガドット様を輩出した国でありますが、彼女が一歳時の映画ですので残念ながら出演されていません!
いや、もしかしたら赤ちゃん役で出ているかも?などと思ったヒマな方は是非、血なまこになって探してみてくださいね!

本作は、最強の対テロ部隊デルタフォースの、と言うか超人チャック・ノリスの活躍を描く大味なコンバットアクションで、メナヘム・ゴーラン御大自ら演出を担当。
新味は全くありませんがツボをうまくついているし、意外と手堅い手腕を発揮しておりますよ。
どうすればチャック・ノリスを格好良く、悪役は苦々しいほどに悪役っぽく撮れるのか?
その辺りに注力しているように思えます。
あとは、「作戦は?」「派手に」という、チャック・ノリスとスティーヴ・ジェームズのやりとりから分かるように、中学生が興奮しそうな派手目の爆発やら銃撃をブッ込んで、グツグツと煮えたぎらせた肉肉しい鍋料理みたいな戦闘シーンで観る者の脳みそをしびれさせる事だけに全神経を集中させているものだからたまりません!


「チャック・ノリスが腕立て伏せをする時、自分の身体を押し上げているのではない。世界を押し下げているのだ」
〜チャック・ノリスの真実より〜


アメリカ行きの旅客機がアラブ系テロリストによってハイジャックされ、デルタフォースが緊急出動!
上の無茶な命令に辟易したので退役していたチャック・ノリスも、「メシなんて食ってられるか!」と遅刻しながらも参戦!
しかし、テロリストもバカじゃなく、用意周到な計画でデルタフォースを煙に巻きます。

そんなこんなしているうちに鑑賞を始めてから1時間以上が経過。
未だにチャック・ノリスの活躍らしい活躍がない!
デルタフォース自体も、ずっと待機モードでござんす。
え〜〜、どゆこと?
全然ドンパチが始まらないんですけれど・・・(汗)

そう、チャック・ノリスの主演映画なのに前半は殆ど出番が無いというのが本作の特色なのです。
その代わり、「殺ってもよし」と派手な奇襲作戦が開始されるやいなや、打って変わって後半はチャック・ノリス無双の雨あられ!
ミサイルで武装したバイクを操り、非道なアラブゲリラ達を完膚なきまでに叩きのめします!
「こいつらワルなんだから、このぐらいやっちゃっても良いよね?」ってな感じで、正義のヒーローにしては結構エゲツない処刑を披露!
最後なんて「メガフォース」を彷彿とさせますが、やたらめったらチャック・ノリスが格好いい!
是非、「チャック・ノリスは勝つのさ!80年代も!」と言って欲しかったなぁ!パクりになるけど!
朝日をバックにキメるチャック・ノリスも、まるで仮面ライダーみたいで最高にエモい!
同じようなミサイルバイクに乗っていた「ゴールドレイダース」のロバート・ギンティとはエラい違い!
例えるなら、メトロン星人とメトロン星人Jr.ぐらい違います!
何が言いたいのかよく分からないと思いますが、とにかく無双しているチャック・ノリスはエグいけれど格好いいぜ!って事だけは確かです!

そんな無敵番長チャック・ノリスの不在時間が長い前半は誰にスポットライトが当たっているのかと申しますと、あえて言うならテロリストのヒゲおじさんが一番目立ってしまっているんですね。
でも、テロリストたちは出番が多い割に、別段ドラマがあるわけでもなく完全にたんなる悪役。
そこで、テロリスト以外に目を向けると、これがまたなんとまぁ!
往年のスター達がこぞって集められているじゃないですか。
リー・マーヴィンにロバート・ヴォーン!
ジョージ・ケネディもシェリー・ウィンタースもスーザン・ストラスバーグも同じ旅客機に乗り合わせているという、「あれ?これってエアポートシリーズだったっけ?」と、これからセスナ機がコクピットに直撃したり、ジャンボ機がバミューダの海に沈んだりするのか?!なんて思ってしまうほど、オールスター映画の様相を呈しているではありませんか!
と言うか、ジョージ・ケネディを乗せちゃダメだって!
ジョージ・ケネディが乗ると、墜落するかハイジャックされるかと相場が決まっているんだから!
そんなの(映画の)世界の常識だよ!
テロリストの1人が搭乗拒否される場面がありますが、ジョージ・ケネディこそ搭乗拒否するべきだった!(←凄い暴論)


・・・と、まぁ、一本の映画としては少し歪な構成なんですよね。
前半にハイジャックされた機内のドラマをみっちりと描いたおかげでラストのお涙頂戴が際立ちますが、肝心の主役の影が薄くなっちゃってます。
反対に、物語の視点がデルタフォース側にうつる後半は、人質たちの出番が急激に減るので、ただの戦争映画にメタモルフォーゼ!
メナヘム・ゴーランとしてはパニック映画と戦争映画をワンパックにしてお得感をだしたかったのかもしれませんが、実際に観てみると構成に締まりがなく、これなら下手にオールスターキャストにしなくても良かったのにと思ってしまいました。
徹頭徹尾、ずっとチャック・ノリス無双が続くバカ映画で良かったのに、妙に偏差値をあげようとした結果、尺も2時間越えでキャノンのアクションものとしては長く感じます。
こういうのは90分ぐらいでちょうど良いのです。

あと、冒頭、もっとチャック演じるマッコイ少尉の戦闘力の高さを嫌という程に魅せて欲しかったですね。
少しばかりケレン味が足りていません。
しかし、そこは流石のキャノン映画なので、大味でもそれなりの面白さで最後まで観せきってしまうのは大したものです。


「チャック・ノリスは時計をしない。彼が今、何時何分かを決めるのだ」
〜チャック・ノリスの真実より〜


それにしても、勇壮なテーマ曲は劇中いったい何度かかればよいのでしょうか(汗)?!
何かっていうと、タンタンターン♪とかかるものだから嫌でも耳に残ります。
最後の締めも、ある理由からしんみりしたかと思ったら、「それじゃ帰りますか」となったとたんにタンタンターン♪
余韻もへったくれもありゃしない。
しんみりしたままエンドロールに突入されても、それはそれで困りますけれどね(汗)

さてさて、なんだかんだ言いつつも鬼強いチャック・ノリスを堪能したいならオススメの一作です。
さすがはモノホンの元軍人なので特殊部隊が似合うのなんのって。
それなりにお金もかかっているので、爆発さえすれば何でもいいや〜!という方は、車や建物が無駄にドッカンドッカンする様子をきっと楽しめることでしょう!
ミサイルバイク万歳!
チャック・ノリス万歳!
中学生のボンクラ脳筋みたいな映画、万々歳だぜ〜〜!!


「チャック・ノリスは玉ねぎを泣かせる」
〜チャック・ノリスの真実より〜


セル・ブルーレイにて