ゴン吉

めがねのゴン吉のレビュー・感想・評価

めがね(2007年製作の映画)
4.1
たそがれを味わうヒューマンドラマ。 
荻上直子が監督・脚本を担当し、小林聡美が主演、光石研、もたいまさこ、市川実日子、加瀬亮、薬師丸ひろ子らが共演。 

ある春の日にメガネをかけたタエコ(小林聡美)が大きな旅行鞄を引きずりながら空港から出てきて、海辺の宿まで歩いて来る。途中、砂浜で店を開いていたメガネをかけた年配の女性サクラ(もたいまさこ)からかき氷を勧められるが断り、宿に着くとメガネをかけた主のユージ(光石研)が出迎える。ユージの話だと携帯電話は繋がらず、3年ぶりの宿泊客だという。翌朝、タエコが目を覚ますと部屋にサクラが座っており、その後、浜に出てみるとサクラが数人の子供たちとメルシー体操をしていた。タエコが宿に戻ると、採りたての野菜と絶妙な按配の梅干しの朝食が用意されており、ユージとサクラの三人で食べる。タエコはユージにお勧めの観光スポットを訪ねるが、そんなものは無く、客はたそがれに来るのだという。タエコは何もすることがなかったので付近の店で赤い毛糸を買い、編み物を始める‥‥

「何でここに来たんですか?」
「携帯電話が通じなさそうな場所に行きたかったんです」

「梅はその日の難逃れ」
「春の海 ひねもすのたりのたりかな」
「氷ありますよ」
春の砂浜をゆっくりと時間が過ぎていく。
誰もいない春の海辺で水平線を眺めながら、かき氷をゆっくり味あう贅沢なひと時。
「いくら真面目にやってても休憩は必要なんです」
メガネをかけた若い高校教師(市川実日子)が昼間にも関わらず海辺でかき氷を食べに来る。
「人生の一番のかき氷でした いくらですか?」  
一杯のかき氷は人によって価値が異なる。
みなさんだったらいくら払いますか? 
「先生 旅は思い付きで始まりますが 永遠には続かないものですよ」 
やがて喧騒にまみれた慌ただしい生活に戻る日がやって来る。
雨の季節。
「あ!」   
「来年もきっといい梅干しができます」
そして翌年の春がくる。   
「あ!」「来た」 
しみじみと至福のたそがれを味わえます。 

2025.1 BS松竹東急で鑑賞(土曜ゴールデンシアター)
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