未来における少年型ロボットの活躍を描いたロボットアニメの金字塔。
原作は手塚治虫による光文社「少年」に連載されたコミック。
世界歴2004年、原子力があらゆる動力を支配し、都会の人口の半分はロボットになった未来。
「ここに10万馬力のスーパーロボットがおります。空を飛べて地中に潜り、そして60カ国語を話す世界一のロボット。その名を”鉄腕アトム”」
科学省密機械局は、多数の部品ロボットが合体して完成するロボット宇宙艇を開発した。人工島の女性司令官ベガ大佐の妨害にあうが、アトムの活躍でこれを撃退する。その後、宇宙艇で月へ向かったお茶の水博士が、妖怪変化とも宇宙人とも思われる紫色の謎の怪物にさらわれてしまう….
「宇宙人の皆さん、宇宙人の皆さん、聞こえますか?聞こえますか?こちらは地球。ただいま宇宙通信を発信しております・・・・」
1964年に公開された作品で、その年は東海道新幹線が開通し、昭和の東京オリンピックが開催された高度成長期の真っ只中。
太陽系の他の惑星にも生き物がいるかもしれないと思われていたようで、様々な生き物が描かれているのが興味深い。
この時代は、アニメが白黒からカラーに変わり始めたころで、本作はモノクロ、カラー、パートカラーで制作された「ロボット宇宙艇」(46話)、「地球防衛隊」(56話)、「地球最後の日」(71話)の三本のテレビシリーズのエピソードを元に新作カットを加えて構成された作品。
ちなみにパートカラーは白黒をベースに一部を赤で着色して描いた映像のことである。
今回鑑賞したのは最新のAIを使った映像レストア技術で新たに全編をフルカラー化したヴァージョン。
劇中でカラーを天然色と言っているのが時代を感じさせ、白黒作品ならではのユーモアが興味深い。
「白黒の映画で紫色かどうか分かるもんか 天然色にしてみろってんだ」
ちなみに今日のようなカラー映像を当時は総天然色と呼んでいた。
アトムは天満博士の息子トビオの生まれ変わりとして作られた少年型ロボットで、部品ロボットの合体をコントロールするリーダーとして描かれている。
対して人工島の女性司令官であるベガ大佐も10年前に息子トムを戦争で亡くし、息子を模したロボットをポポ博士に作らせる。
ロボットを息子の代わりとして愛情を抱く未来が訪れるのかもしれない。
一方で人間によるロボットへの軽蔑も描かれている。
爆弾を擬人化するために、ロボットとして描き、爆弾の立場で発言するのが切なくも興味深い。爆弾を使うべきでないと主張していた地球人が、立場が変わると自ら爆弾を使いたがるのが人間らしい。
ロボットの尊厳と共存、爆弾の意義、人間のエゴなどを描いた重厚な作品です。
当たり前と思っている日の出が当たり前のように拝める日々が未来でも続いていることを願わずにはいられない。
「ほらもう直ぐ太陽が昇ってきますよ」
2025.3 NHKで鑑賞(フルカラーレストア版)