雨虎

ダ・ヴィンチ・コードの雨虎のネタバレレビュー・内容・結末

ダ・ヴィンチ・コード(2006年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

非常に知識が要求される映画だ。それも絵画、宗教、歴史といったジャンルで、しかも日本では信者の少ないキリスト教、歴史では大学で専攻していなければ、せいぜい4、5行程度しか書かれていなかったと個人的に思うほど印象の薄い限定的な時期の話もであるため、この映画を初見で理解できた人は多くないだろう。
イエス・キリストは人間と宣言したこの作品は相当荒れたらしい。それもそのはずで人間ではあり得ない処女懐胎、受胎告知とそれこそレオナルド・ダ・ヴィンチでも描かれた神の子であるという伝説を真っ向から否定したのだから。この辺りは『ミッドサマー』と同様の宗教観に関わる内容で日本人としては馴染みにくい部分ではあるだろう。

この作品は原作小説の展開を丁寧に沿って制作されていると聞いた。あまり歴史ミステリー系の小説は好みではないため、敬遠していたが、あの分量の内容を150分弱に収めるという点は素人なりに無茶に感じる。
そのため、事件や謎自体はテンポよく進み、ラングドンやソフィーが追われているという緊張感を味わうことができる点は評価できる。そしてその謎の辻褄、解決のための布石が緻密に組み込まれており、不自然さもない。
しかしながら、やはりテンポは早すぎるようにも感じた。ラングドンは快刀乱麻を断つかの如く、勘違いでなければ一晩でキーストーンを入手、翌日にはクリプテックスの暗号も解いている。隠され続けていた事とはいえ、こんなに早く解決される暗号とはセキュリティ的に不安すぎる。
また、この速い展開であるため、人物の背景の表現がやや短いようにも感じた。ドラマ的な部分を感じられる場面よりもミステリーの部分が多いため、ミステリーを解くクイズ番組のような印象も受けた。

ただ、ミステリーとしては一部、定説ではない説を採用してはいるものの、骨太な内容となっており、もう少しじっくり描かれていればかなり満足度の高い映画になっていたのではないかとも感じた。
雨虎

雨虎