雨虎

猫の恩返しの雨虎のネタバレレビュー・内容・結末

猫の恩返し(2002年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

第一印象として、あまりジブリらしさはない印象を受けた。
その理由としてスタジオジブリスタッフが少なかったこと、宮崎駿が関わっていないことなどが挙げられると思う。また、『耳をすませば』と同様に柊あおいの原作から作られていること、続編を作らないジブリで事実上の続編作品という点などがその要因だろう。

事実上の続編というだけあって、バロン、ムタがいるが少しずつ印象が変わった。例えばバロンはドイツ貴族という印象だったが、所作や嗜好はどちらかといえば英国を思わせる。また、ムタはより大柄になり、粗暴な印象を受けた。

物語の構造としては第三者が勝手に気を回した結果、空振っていたという誰にも悪意がなかったものとなっており、どのキャラクターも憎めない。

「自分の時間を生きる」というセリフがあるが、これが物語の核心であり、テーマだろうと思う。
冒頭でハルが寝坊し、朝食を食べている母親を恨めしく見ながら登校したり、掃除当番を代わったりと何気ない風景に見えるが、真面目な性格によって自分のしたいこと、自分で決定することに慣れていないように見えた。そんな中、猫を助けるという自分の意志でした行いによって物語が大きく変化した。王道とも言える物語の始まりだ。
その夜に猫王のお礼、ナトリとの会話、猫の事務所へ行く指示、ムタについていく場面と自分で決定した場面が一切ない。

漠然と生きているハルは翻弄されてばかりに見え自分の時間を生きていないようだ。しかし、猫の国での体験から自分を意志を持つことで翻弄されていても自分の時間はあると学んだ。
例えばバロンのその都度、味が変わる紅茶もそうだろう。大雑把に淹れているから温度などに左右されているとも言えるが、それでも自分の意志を持ち、その時その時を楽しんでいる。だからこそ、「猫を助けたことも迷って苦しんだこともみんな大切な自分の時間だった」という学びに繋がったのだろう。
雨虎

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