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さすらいの二人のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

さすらいの二人(1974年製作の映画)
4.0
[直らない悪癖以外の全てから逃げる男] 80点

傑作。1975年カンヌ映画祭コンペ部門出品作品。マリア・シュナイダー映画祭その2。いきなり前作『砂丘』との関連か、砂丘で取材をするジャック・ニコルソンが登場する。取材に失敗して逃げ帰った宿で、隣室の男が死んでいるのを発見するが、この男が自分にあまりにもそっくりなので成り代わることにするというもの(ジャック・ニコルソンのそっくりさん似てる…)。アイデンティティの強奪ゆらぎ映画としては『セコンド』を思い出すが、冒頭の風景から『ヘカテ』の方を先に思い出した。長回しの中に平然と過去が混入して来る感じもダニエル・シュミットに似てる。ヒロインは謎の女子大生を演じるマリア・シュナイダーのはずだが、開始1時間してもようやく登場する。マリア・シュナイダーがスカート履いてるの初めて観たかも。いつもしかめ面のイメージがある彼女が本作品では歯を見せて笑うのが印象的だった。そんな彼女がジャック・ニコルソンに"何から逃げてるの?"と聞き、爆走するオープンカーの後部座席から後ろを見るシーンが好き。デヴィッドからもロバートソンからも逃げ出して、次第に何者でもなくなっていく(マリア・シュナイダーに至っては名前すらない)ジャック・ニコルソンを、双方の過去が追い回し、最終的にフレーム内フレームに近付いていく長回しの中にその全てが収まっていくのが凄い。

いつも陰鬱な顔してるイメージのある女優が歯を見せて笑う映画、イレーヌ・ジャコブの『トリコロール / 赤の愛』とカテリーナ・ゴルベワの『欲望の旅』などがある。マリー・トランティニャンのそういう映画を捜索中。
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