御朱印帳

赤ひげの御朱印帳のレビュー・感想・評価

赤ひげ(1965年製作の映画)
3.5
小石川療生所にやつてきた医師と赤ひげという医師、そして患者を通しての物語。
今でこそ子供の貧困、児童虐待、人身などとして問題視されているものの当時は見過ごされていた様々な社会問題を直視し、赤ひげを通して訴える。
4人ほどの患者の臨終とその背後にあつた人生をオムニバス風に連ねて、ストーリーを重厚にする。
昭和40年、三船敏郎が黒澤監督作品に出演した最後で、黒澤監督も独立前の最後の作品、長尺であるものの完成度が高く一つの時代の区切りに思えた。

「医は仁術なり」とよく言われるが、「あらゆる病気に対して治療法などない。体力があれば助力してやれるだけだ。」など医学の本質についても深い洞察が感じられる。

三船敏郎は座っているだけでも、一つ一つのセリフで圧倒的な存在感を示し、用心棒や椿三十郎の延長で、合気道のような刀の無い殺陣でしつかりと腕っぷしも披露するものの、「こんな乱暴はいけない。」というのは正直笑える。

女郎部屋から救い出された人間不信で思い精神疾患を患っていた少女が回復していく様が希望を持てた一方で、長次という盗みを働く子供が無理心中に巻き込まれて親に毒を盛られて生死を彷徨っている最中に女たちが回復を願い、「長ちや〜ん」と井戸に向かって叫ぶ様は、世の理不尽のせいか私も泣きそうになつた。

クレジットされているものの仲代達矢、山崎努、香川京子、菅井きんは言われないと分からない。
黒澤明に見出されるだけあって、皆、芸達者
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