御朱印帳

晩春の御朱印帳のレビュー・感想・評価

晩春(1949年製作の映画)
3.6
昨年が小津安二郎生誕100年ということで新聞の特集記事が様々あり感化され、「東京物語」は以前鑑賞していたものの、またどれか見ようか、ということで鑑賞。

原作は「父と娘」昭和24年完成。
娘を思う父、父を思う娘、娘を嫁にやる父親の心情と嫁に行く娘の心情との対比、時代の変遷と変わらぬものを交えて父娘の関係を静かに描く。やはりラストシーンが象徴的。
70年前、終戦直後の鎌倉、東京の銀座、東海道線の車窓の風景が建物が少なくとても新鮮。また、昭和20年代は女性たちの普段の所作も美しい。

紀子役の原節子は、黒澤明の「白痴」を先に見ていてイメージを引きずられて眼力がちよつとキツすぎるようにも感じたが、恐らくは求められた当時の女性像。

原節子の抑揚と父親役の笠智衆の一貫した抑制が大きな軸。笠智衆は40代後半で普段着の56歳を上手に演じるものの、肌艶は流石に若い。

能を鑑賞する場面は鑑賞する側が表情を変えずに、父親が一世一代の演技を打つ能を演じているようで象徴的。

和装と洋装、サイクリングを楽しむ際のコカコーラの看板や銀座の英語の看板を長写にして、時代の転換を示唆しているように見えた。

黒澤映画は動、小津安二郎の作品は静と大別した解説もあつたが、小津作品はまだ正直よくわからないものの、日本映画史に刻まれた巨匠、映画ファンであれば一度は見てもらいたい。
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