フィギュアスケート界を揺るがしたスキャンダル「ナンシー・ケリガン襲撃事件」(1994.1.6)で有罪判決を受けた米国の女子フィギュアスケーター、トーニャ・ハーディングの半生を描いた伝記映画。
監督はクレイグ・ギレスピー。
原題:I, Tonya
(2017、120分。PG12)
映画のストーリーは略
~ナンシー・ケリガン襲撃事件について~
米国の女子フィギュアスケーターで日本の伊藤みどりに次いでトリプルアクセルを成功させたトーニャ・ハーディングが関与した事件。
1994年のリレハンメル冬季五輪の選考会直前、ライバルであるナンシー・ケリガン選手がハーディングの元夫が雇った人物に膝を殴打され怪我を負う。
ケリガンは選考会(全米選手権)欠場に追い込まれ、ハーディングが優勝。
ハーディング自身は事件への関与を疑われながらも五輪に出場(ケリガンも特例で出場)。
オリンピックが終わった後の1994年3月16日、ハーディングは罪を認めて懲役刑を免れ3年間の執行猶予、500時間の奉仕活動、16万ドルの支払(罰金10万ドル、検事局の費用1万ドル、スペシャルオリンピックス基金への寄付5万ドル)、精神鑑定の実施を言い渡される。
その後、全米スケート協会は、1994年全米選手権での優勝と1999年までの公式大会出場権やコーチになるための権利を剥奪した。
その4年後、1998年長野オリンピック直前、アメリカのTV番組でハーティングは襲撃事件についてケリガンに直接謝罪。ケリガンは「二度とあんな事件は起こさないで下さい」と申し入れている。
~登場人物~
①トーニャ・ハーディング(マーゴット・ロビー、4歳: メイジー・スミス、幼少期: マッケナ・グレイス)
・母、ラヴォナ・ゴールデン(アリソン・ジャネイ)
・コーチ、ダイアン・ローリンソン(ジュリアンヌ・ニコルソン)
・ドディ・ティーチマン(ボヤナ・ノヴァコヴィッチ )
②夫、ジェフ・ギルーリー(セバスチャン・スタン):1990年にハーディングと結婚し1991年に離婚。暴力亭主。
・その友人、ショーン・エッカート( ポール・ウォルター・ハウザー)
・殴打実行役、シェーン(リッキー・ラサート)とデリック(アンソニー・レイノルズ)
③その他
・ライバルのフィギュア・スケーター、ナンシー・ケリガン( ケイトリン・カーヴァー)
・元「ハードコピー」リポーター、マーティン・マドックス( ボビー・カナヴェイル)
「アメリカには、愛する仲間と憎い敵が必要なの。…真実なんかない。全部ウソっぱちよ。」
①事実をぼかすために、関係者の証言を元に物語が作られている。
②愛情を欠く母のモンスター性、事件を主導した元亭主の暴力性、実行役の誇大妄想などを提示することで、ハーディングの犯罪への関わりが曖昧にされ、同情を呼ぶ。
結果として、ハーディングを擁護しているように感じられる。
③そして、自分を愛してくれない人が言うことは全部ウソっぱちだ。何をやろうが、どのように生きようがこれが私、トーニャだ。と開き直って宣言する姿は、今のアメリカそのものだ。