よつゆ

近松物語のよつゆのレビュー・感想・評価

近松物語(1954年製作の映画)
4.6
やはり溝口健二…。
殆どは溝口作品の定石通りだし、そんな作品ばかり観てきたが、なんでか毎回感動してしまう。

ただ、定石通りとは言ったものの、本作は『残菊物語』や『山椒大夫』『雨月物語』とは決定的に違う部分があり、やはり思い返せば似ているようで似ていない作品だったと思う。
だからこそ、中盤、そして終盤でしっかり見せ場が作られていて、そこで観客は映画にやられてしまう。
なんてこった。

当然画もいい…。
二人の張り詰めた緊張感、秘匿感が琵琶湖の水面に伝う波紋の如く感じ取れる。
そしてその隠された二人の互いを想う恋心が明かされる。

本作は常に悲劇だ。
その中で二人の愛だけが悲劇を癒やしてくれる。
それでも悲劇というシナリオは二人を許してくれない。
酷いよ溝口健二…。
日本が特に浄瑠璃なんかで培ってきた悲劇の作り方を、溝口健二は熟知していたのだろう。
本当に映画作りが上手すぎる。
映画を思い返せば思い返す程に良さに気が付く。
よつゆ

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