よつゆ

メトロポリス 完全復元版のよつゆのレビュー・感想・評価

メトロポリス 完全復元版(1926年製作の映画)
4.3
ずっと観たかったフリッツ・ラングのメトロポリス…。
どうせなら完全修復版を、どうせならBlu-rayで、と思って買ったが、バカ高かった…。

映画においてディストピア、SFといったジャンルに多大な影響を与えた本作。(当然他のジャンルや、他のカルチャーにもだが。)
ディストピア、SFが好きで、アンドロイドが好きな私はずっと観たかった。
ただ、観て純粋に感じたのは思ってたんと違う…、だった。
私は、どちらかと言うと『ブレードランナー』や『エクス・マキナ』のような、アンドロイドの持つ人間性への懐疑的なものを期待していたが、この時代にはまだそうした価値観の芽生えはなかったのだなと感じた。

それを受け入れることができれば、本作の主題をクリアに受け取ることができたと思う。
本作は、近未来における肥大化した都市、地上と地下の構図に象徴されるかの如く明瞭となった格差的貧富の差、行き過ぎたインダストリアリズム…。
そうした、このままではそうなりかねない未来、或いは既にそうなりつつあった当時の現代への警鐘、アンチテーゼを感じた。

地上に生きるまさに貴族、そしてブルジョワジーたちと、地下に押し込められた労働者階級たち。
それらの格差はあまりにも広がり、そう簡単に埋められなくなっていた。
それは、まさに救世主であり神のように崇められる者の存在が現れなければ反抗の意思が動き出さないくらいには。
そうして現れたまさしく救世主のような女性マリア。
そこから物語は大きく動き始めるが、一筋縄ではいかないのがフリッツ・ラング。
復讐と裏切り、そして革命。
たった一人の力で群衆が狂気と化す様が恐ろしい。

面白かったが、まだ理解しきれていない部分が多く感じた。
よつゆ

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