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偽大学生の一のレビュー・感想・評価

偽大学生(1960年製作の映画)
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同じく学生運動を扱った大島渚の『日本の夜と霧』とほぼ同時期に公開されているわけだが、あっちの7倍くらい面白い。偽学生・ジェリー藤尾が左翼学生運動の欺瞞に精神を狂わされる展開からすると意外にも思えるが、脚本の白坂依志夫によれば「全学連賛成の映画」なのだという。「ブニュエルの弱いものは徹底的にいじめるという…『忘れられた人々』。あのイメージがあったんです。徹底的にね、ダメなやつはダメと。本当ダメなんだから(笑)。」「ダメなやつはダメじゃないですか(笑)。絶対ダメなやつはダメでしょう。絶対、間違いないでしょ。(『不眠の森を駆け抜けて』より)」と、白坂はむしろジェリーにかなり辛辣である。増村保造はそれをブラックユーモアも交えつつ、比較的ねばっこく描写する。印象としては藤子不二雄A感もあり。椅子に縛り付けられたジェリーに手掴みでパンを食わせる若尾文子のゴミを見るかのような表情、サイコー。伊丹サーティーンの卑近なリーダー像や転向者・船越英二の描き方もイイ。
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