TakahisaHarada

TIME/タイムのTakahisaHaradaのレビュー・感想・評価

TIME/タイム(2011年製作の映画)
2.0
全人類の成長が25歳で止まるようになり、以降は貨幣として流通している「時間」を手に入れて生きていかないといけないという社会派のSF。

不老不死、「時間」が貨幣とかどれか1つでもSFが成り立つような要素が色々詰め込まれてるし、不老不死になった人類の個体数を保つための「時間=貨幣」という設定は面白くてかなり期待して観始めた。
序盤はウィルの嫁かと思いきや母、コールガール風の女が言った「10分で1時間」、シルヴィアの親子3代見た目が皆若いとか、不老不死になった富裕層は事故で死ぬことがないようにむしろ制限の多い生き方になったとか、結局貧困層も富裕層も不幸になった(「貧者には死、富者には倦怠」)とか、この世界ならではの描写があって面白かったけど、以降の展開とかラストの着地は期待外れで結局とっ散らかっただけだったという印象…。

色々な要素が詰め込まれてたけど結局問題になるのは格差の拡大。富裕層は莫大な富(=時間)を得て不老不死になる一方、貧困層はその日暮らしで稼ぎがショートすると即人生終了。わざわざ時間の要素を絡めたせいでその「時間」が人生の残り時間と資産、2つの価値を兼ねていて複雑だし、貧困層の成り上がり、復讐を描きたいなら普通に今よりも格差が拡大して二極化した未来を描けば?と素直に思った。

最大の違和感は皆ギリギリを攻めすぎというところで、どんなに貧困でも最悪ローンを組むなりして1年とか人生の残り時間を確保するでしょと思ってしまった。
適者生存という大義名分のもと死ななくていい人が死んでるなら何とかしないといけないと思うけど、ウィルの母も監視局員のレイモンドも単なるうっかりで死んでて、「こいつら死ぬべくして死んでるじゃん」と思ってしまった。
その結果悪役フィリップの立ち位置が曖昧だったし、ラストも貧困層が憂さ晴らししただけって感じがして微妙だった。ウィルに10年分貰ったボレルが1年分も酒を買って死んだ描写がしっかりあるので、貧困層に時間を配ってもろくなことにならない、根本的な解決にならないことまで実証済み…笑
すべてを背負わされてる感のある悪役フィリップのもう1つの罪は、妻が彼を「あなたのせいよ、私たちみんなを縛ってた」と咎めたように、過保護な姿勢で家族の自由を奪ったこと。ただ、これもシルヴィア目線でもっと自由に冒険したい気持ちは分かるけど、人生の残り時間数分、数秒まで何回も追い込まれるのが本意だとしたら結構クレイジーだな、彼女の言ってた自由とか冒険ってこういうのじゃなくない?と思った。

ウィルの成り上がり方が全然かっこよく見えないのも残念。ハミルトンを守り時間を貰ったのは良いとしても、ポーカーで勝ちを確信してた理由が謎だし、バトルの勝ち方も意味不明(腕相撲をよりつまらん勝負に改悪できるの逆にすごい)。
監視局員が時間を奪い取ったわけじゃないウィルを執拗に追うのも謎。革命を阻止したい(タイムゾーン間のバランスを保ちたい)富裕層側の息のかかった組織ってことだったのかな。
他にもあのギャングがわざわざバトルを挑んでくるのとか謎だった。

終盤のフィリップのボディーガードたちが逃走中すぎるのとか、金庫を開けたら「100万年」が鎮座してるのとかは笑ってしまった。
映画を観てて「キスしてる暇あったら早く!」と緊迫した場面で思うことはよくあるけど、キスしてる暇のなさで言ったらこの映画が一番かもしれない笑