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白い巨塔のtakのレビュー・感想・評価

白い巨塔(1966年製作の映画)
4.2
恥ずかしながら。山本薩夫監督作を実はあまり観ていない。今まで観ているのは「皇帝のいない八月」と「あゝ野麦峠」「氷点」。映画検定2級のくせに「戦争と人間」も観てないのか、とお叱りを受けそう😓。本作「白い巨塔」も今回が初鑑賞。ドラマなどで語り継がれている原作だけに、観たつもりになっていたのかも。

描かれるのは、次期教授の座をめぐる大学病院内のパワーゲーム。実績もある主人公財前は最有力だが、東教授は彼のスタンドプレイが目に余って仕方ない。教授選に向けて対抗馬が推薦され、表裏で票の勘定が激しくなっていく。その成り行きの一方で、財前は同期の助教授から相談されたある胃がん患者の手術を担当する。

なんの業界でも地位をめぐる裏側の話は、好きじゃない。だが「白い巨塔」は語られ方が実に巧みで無駄がないのがすごいと思った。一つ一つのエピソードが、登場人物それぞれのキャラクターを際立たせる役割を果たしていて、目が離せなくなる。自信と野心にギラギラしている財前の言動。里見助教授との臨床検査をめぐる対立ではその自信過剰な態度にも、教授選挙に金にものを言わせようとする父親にもイライラさせられる。

映画後半には医療過誤訴訟で、そうした人間模様の描かれ方はますます濃厚になっていく。欲に駆られた人間って汚い。だけど、彼らが染まっていく様子に感じる怖さは、嫌悪感が先にくるけれど、ことの成り行きが気になって、どんどん引き込まれてしまう。見事だ。

長く映画やドラマで活躍している面々の若い頃を見ることができるのも興味深い。
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