Yutaka

エンター・ザ・ボイドのYutakaのネタバレレビュー・内容・結末

エンター・ザ・ボイド(2009年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

初めての映像体験。ギャスパー・ノエの真骨頂とも言えるドラッギーな視覚体験が出来る芸術作品。OPからトリップしそうになるから気をつけた方がいい。単なる情報の羅列であるクレジットの本来性を逆手に取った秀逸なOP。そこから主人公がラリってトリップするんだけど、そのトリップ映像が凄すぎるし心地好くてずっと流しておきたい。
ただのトリップムービーかと思いきや、幻覚体験の言説には必ずと言っていいほど参照されがちな「チベット死者の書」が引き合いに出され、輪廻転生に伴うバッドトリップの話がされる。まさかなと思ったら主人公が銃殺され、そこからは走馬灯と幽体離脱、輪廻転生が死者(主人公)視点で描かれる。こんなのは初めて見るし成立してるのが凄い。過去のトラウマが回想の中でもフラッシュバックされたり、その走馬灯は極めてトリッピー。これが所謂バッドトリップなのかと。兄妹愛と"Fuck"な人生の乱れ打ちで胸が締め付けられる。
ギャスパー・ノエは即物的な恍惚を只管描く人だと思ってたけど、本作ではその快楽主義的な行為にも過去の体験と結び付く部分があって、『アレックス』で描かれた反因果律的な姿勢とは真逆の方法論を実践していたと思う。言及されている通り、仏教的な思想をギャスパー・ノエ流に解釈したのがこの滅茶苦茶な映画。
舞台が日本で、ゼロ年代の東京のネオンとノエの作風はそりゃ親和性高いでしょ。ロケーションを存分に活かした映像美。『ロスト・イン・トランスレーション』と並んで記号化されたトウキョウの上手い使い方の代表例として挙げられると思う。
こんだけ駄弁ったけど本作は感じる映画以外の何ものでも無いので、何も考えずに見るのがおすすめ。
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