ロック史において進化というのは、過去の定義からはみ出すことで、偉大なバンドはみんなそうして生まれてきた。
つまりは、はみ出す行為それ事態がロックという音楽で、仮にロックに教科書があるなら唯一書いてあるのは「教科書なんて破り捨てろ」だ。こんなのロックじゃないよと言われなければ、そんなのはロックじゃない。
こと映画に関しては、「この監督は映画の文法を分かってない」というような詰まらない評論を見かけることがあるが、文法通りにやりたかったらそもそも映画なんて撮ってないんじゃないだろうかといつも思う。
この『エンター・ザ・ボイド』なんて、幽体離脱した視点で覗き見るエログロワールドだ。根底にあるのは妹への愛情で、それが手法、発想、センスの全てが飛んだところで組み立てられている。
映画を教科書通りに楽しみたい人に、宇宙と交信するための電波でも浴びせるような一本。文法もクソもあるかよ!
(それにしても、このレビューで書いてることの前半部分は、ロックを語る上でのいかにも教科書通りの常套句だな、、、)