ブタブタ

2046のブタブタのレビュー・感想・評価

2046(2004年製作の映画)
3.6
昔はキムタク好きだった。
日本にはもう数少ない昭和の時代の映画全盛時代の「スター」みたいな存在で美空ひばりや高倉健みたいにひとり立ってるだけで絵になる存在だと思った。
何やってもキムタクって揶揄されてもそれはスタータイプの役者だから当然そうなる。
例えばガラスの仮面の姫川亜弓みたいな。

で『2046』ですが当時はキムタク目当てと近未来SFとして宣伝されてたので見に行ったら想像と全然違っててガッカリした記憶が。
『欲望の翼』『花様年華』に次ぐウォン・カーウァイ監督1960年代シリーズの3作目だそうですが当時は全く知らず他二作も未見。
『欲望の翼』と『花様年華』を見ない事にはさっぱりわからない作品らしいです。

ホテルに泊まる作家チャウ(トニー・レオン)はホテルオーナーの娘と日本人ビジネスマンの、この日本と香港に遠く引き裂かれた恋人同士を想い小説を書く。
その小説が『2046』

1967年の香港と2046年の架空の都市
、現実と虚構のふたつの世界がチャウとタク(木村拓哉)2人の主人公によって交錯していく...みたいな話しを想像してたんですがこの未来パートは殆どなくて、と言うか具体的な物語が描かれることは無く「2046」行きのミステリートレインの中でのタクとアンドロイドの恋、車掌ワン(ホテルのオーナーと同じ人物)によると神でさえ問題を抱えている、機能が進化しすぎてしまったアンドロイドもやがて衰える(要約)。
この壊れたアンドロイドとの話し、フラッシュバック的にごく短いシーンでタクと仲間たちが何者かから逃げる(ミステリートレインに乗る為に?)ところ等が描かれるだけ。

最後に辿り着く「2046」とは日本で、タクと恋人はそこで巡り会えた?でもそれはあくまでも幻想の中の日本というユートピア=存在しない場所。

「2046」とはユートピア、存在しない決して辿り着けない場所で、『少女革命ウテナ』の「世界の果て」やカフカの『城』と同じ概念の存在であり小説『2046』の中にしか存在しない場所。

冒頭と結末に描かれる未来都市「2046」の風景。
超高層建築群とその間を縫って走る弾丸列車。
それに被るタクのモノローグ。
これで充分。
あとは自分であれこれ妄想するのが楽しい映画でした。

ウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』は中国化する世界と電脳空間が舞台でしたけど『2046』の未来パートはまさに『ニューロマンサー』のヴィジュアルでした。
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