来夢

パラノイドパークの来夢のレビュー・感想・評価

パラノイドパーク(2007年製作の映画)
4.1
娯楽性はとても低く、かといって強いメッセージ性があるわけでもなく。ただ淡々と、思いがけず人を殺してしまった少年の行く末を見守るだけの映画。なんだけれど、なぜか強く胸に引っ掛かる。スクリーンに大きく余白を残して映される4:3の映像はそれだけでもこの映画の異質さを感じさせ、劇中に流れるエリオットスミスの曲は、ガスヴァンサントの映画によってスターダムに登りつめた彼の謎の死と重なり、自死や殺害への不確実な不安となって熱された感情を冷淡さでいなしているように感じる。つまりは淡々として見えるのは熱さと冷たさの両立であって、極度の感情のうねりがその中にはあるんだろうね。それがとても人間的で、とても映画的ではない故に、自分自身がこの映画を客観視しているつもりになっていることすら疑わしく思えてくる。なにか体の一部を作品と同化させられているような不思議な感覚に陥る映画です。

初回鑑賞劇場:シネセゾン渋谷
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