ひでやん

フィールド・オブ・ドリームスのひでやんのレビュー・感想・評価

3.6
トウモロコシ畑でつながって。

あの日あの場所に、置き忘れた夢がひとつふたつ。家族や仕事や友や恋…悩みの絶えない人生が積もり、夢に蓋をする。それは縦積みにされた雑誌のようで、一番下の夢が引っ張り出せずに年を取る。燃え尽きたと思っていても、今も尚、胸にくすぶる夢の残り火…。

今作は、その残り火を消すおとぎ話。いい話だなと思う。「造れば彼がやって来る」という声を聞いて、トウモロコシ畑に野球場を作っちゃう奴は変人だが、何もしない常人よりはいい。「まず先に作っちゃえ。人は後からやって来る」という考えは、フィールドオブドリームス症候群と言われているみたいですね、自分もそのタイプ…。

で、やって来た。いい話です。でもなあ、作家や老齢の医師へと繋がる展開が腑に落ちない。八百長疑惑で球界を追放された選手と彼らは「野球」という夢の共通点はあるが、彼らの「痛み」はレイとはなんら関係のない他人の痛み。ラストシーンでレイ自身の痛みが癒されて感動したが、そこに至るまでの経緯に「なるほど」とはならなかった。

生身の作家がトウモロコシ畑の向こう側に招かれたのはなぜか?妻の弟が突然「見える」ようになったのはなぜか?境界線を超えると魔法が解ける場面や、レイと父の確執が解ける場面は良かった。
ひでやん

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