マルコ・ベロッキオ監督、26歳の時のデビュー作品にしてパゾリーニが絶賛…初鑑賞です…。
圧倒的な狂気…主人公のルー・カステルの演技に打ちのめされました…。
イタリアの辺境にあるブルジョワ家庭…
全盲の母親と4人の子供たち…
一家の柱として経済的に支えている長男アウグスト…
発作を起こす持病を持ち、奇行の目立つ主人公の次男アレッサンドロ…
長男を偏愛しているナルシストの妹ジュリア…
知的障害で癇癪持ちの三男レナード…。
5人家族のうち3人が何かしらの障害や病を持つ所謂社会的弱者…家庭が社会の縮図となりエリート至上主義に対する憤怒を代弁しているようにも受け取れます…。
アレッサンドロは職に就かず、日々母親の面倒を甲斐甲斐しく見る一方で、目が見えないことを良いことに不謹慎な奇行に走ります…。
またひとり、素晴らしい俳優ルー・カステルと出逢えました…殺気立つ彼の演技に圧倒…そして唐突な破顔にはゾクッとします…。
一方で彼は長男アウグストに対して羨望を抱き、家族の役に立ちたいと思うのですが儘ならず、苛立ちを募らせる日々…その実…虚飾に満ち、堂々とした唯一"マトモ"とされる長男が1番の醜悪だという恐ろしさ…。
エンニオ・モリコーネの不穏な音楽も怪しさを助長し、家族の食事のシーンでの刺々しさやスリリングな緊張感に息を呑みます…。
そしてフラッシュバックに近い短いショットや挑発的なカット割りのセンスも好き…物語の中の衝動を掻き立てます…。
〜〜〜⚠︎以下ネタバレ含みます⚠︎〜〜〜
やがてアレッサンドロが兄を想い、考えついたのは…他の家族を引き連れての心中計画…
ただそれも失敗に終わりますが…彼の暴走は止まりません…無駄だと思える存在を切り捨てることに…。
『椿姫』のアリア『花から花へ』の流れる中…残酷で孤独な破滅の描き方が秀逸…圧巻のラストです…。