エリ

カイロの紫のバラのエリのレビュー・感想・評価

カイロの紫のバラ(1985年製作の映画)
5.0
なんて愛おしい作品なんでしょう...。
何度見ても “監督・脚本 ウディ・アレン” に「あらヤダ...!!!」と口を覆っちゃう。
ほとんどの作品を観ていないにも関わらず「私...一生ウディ・アレンがわからんガール(今やBBA)なんじゃ...」と思っていたので目からウロコだった。たった84分に詰め込まれた夢物語...何度でも観たくなる。

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遊び呆ける夫を支えながら、慎ましく生きる主人公セシリア。健気な彼女に次々と災難が降りかかる。そんな時にも“映画館で作品に没頭する時間”は、彼女にとってかけがえのない時間。

上映中の「カイロの紫のバラ」がお気に入りで、何度も足を運び鑑賞していたある日。なんと映画の主人公が、セシリアに語りかける。そして彼女の元へと飛び出してきて......映画館も“映画の中の人達”も大パニック!
その様子に、テレビ越しに観ているこちらも楽しくて夢中になっちゃうに決まってる!!

こんな夢のようなはじまりから、セシリアと共に次々と起こるドラマを楽しみ、素敵な時間に思いを馳せ、静かに幕を閉じる。

様々な世界に夢を見たり、ふと現実の問題と向き合うようなヒントを貰えたり...そんな普段の“映画を観ている時間”を、分かりやすい部分を切り取りアレコレ体現していくセシリアに、気持ちはすっかり重なる。

最後のシーンの、スクリーンを前に一人佇む彼女とその眼差しがとても心に残った。
“そうなのよ、これだから映画はやめられない”と胸がいっぱいになってしまう。

上手くいかないことだらけでも、“たった一人の自分”の心が豊かであれば。それは自分を大きく支えてくれる。
あたたかな感性でそっと寄り添ってくれるような、素敵な作品でした。
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