桃子

聖なる酔っぱらいの伝説の桃子のレビュー・感想・評価

聖なる酔っぱらいの伝説(1988年製作の映画)
4.2
「イタリア語をしゃべるルトガー・ハウアー」

原作はオーストリア人、主演俳優はオランダ人、監督はイタリア人、舞台はフランスのパリ、言語はイタリア語である。なんとも不思議な気がしたが、映画界ではよくあることなのだろう。
ストーリーそのものも不思議なイメージだ。ファンタジー仕立てのわらしべ長者みたいな物語だけれど、タイトルから想像できてしまうとおり、ラストは悲しい。
この映画はルトガー・ハウアー目当てで見た。私は彼の大ファンで、特に大好きなのが「レディ・ホーク」である。ミシェル・ファイファーと共演していたこのファンタジー映画は、もう何度も見ている大好きな作品で、また見たいと思っている。でも、どの動画配信サイトにもないので、宅配サービスにしようかと思案中だ。
大ファンを自称しているくせに、ルトガー様が去年の夏に亡くなっていたことを知らず、かなりショックだった。彼の全出演作を見ているわけでもないので、ファン失格なのだと思うけど…
この映画では、もの悲しいホームレスの役を淡々と演じている。台詞が少ないので、彼の表情がものを言う。涙っぽい目、かさかさに乾いたくちびる、絶対に下品にならない無精ひげ… この映画はアップが多いので、彼の淡いブルーグレーの瞳がとても印象的だった。
ルトガー様がイタリア語をしゃべっている!!と驚いたのだが、考えてみたら、イタリア映画の基本はアフレコである。撮影現場のマイクの性能が悪くてそういう方法をとるようになったらしい。よく見ると台詞の音声とくちびるの動きが合わない。もしかしたら、ルトガー様本人の声ではなくて、吹き替えの俳優さんの声なのかもしれない。そのあたりまではわからなかったけれど。
物語は奇跡続きのまま終わるのかと思いきやさにあらずで、主人公アンドレアスの性格もどこか矛盾している。謙虚なのかと思いきや、ちゃっかりネコババしたりする。愛する女性に対して一途なのかと思いきや、若い美女とアバンチュールの一夜を共にしたりする。どこもかしこも、何かが揺らいでいる感じがこの映画の魅力である。
それにしても、昔(と言っても80年代だけど)の映画は色がいい。落ち着いたカラーがとても心地よくて、いつまでも風景を見ていたくなる。
桃子

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