J四郎

荒野の七人のJ四郎のレビュー・感想・評価

荒野の七人(1960年製作の映画)
4.2
「七人の侍」のリメイク作品にして西部劇の名作。
元の黒澤作品「七人の侍」自体がジョン・フォードに影響を受けたもので、ハナっから西部劇と親和性が高かったわけだ。
銃撃戦メインだった通常の西部劇とは一線を画し、ガンマンの身の処し方に重きを置いたところが当時は新鮮だったようだ。

当時無名だったスティーブ・マックイーンやチャールズ・ブロンソン、ジェームズ・コバーンなど出演しており、今みれば超豪華出演陣になっている。

最初っからお馴染みのテーマ曲が流れる!
この曲はある一定の年齢以上の方なら、観た事が無くても一度は耳にしたことがあるはず。
ひと昔前まで、テレビで雄大な自然が画面に出てくるシーンでは頻繁に流れていたから。もうこれを聴くだけで上がってきまっせ。

ストーリーの大筋は「七人の侍」とほぼ同じ。三時間くらいある元ネタを二時間にまとめているので実にテンポ良く進みます。
しかし、考えてみれば三時間もあるのにテンポが良かった「七人の侍」ってやはりスゴイな。

ただ元ネタをなぞるだけではなく、クライマックス前から一工夫くわえた展開になる。
ここは結構面白いけど、冷静に考えたら何でそうなんねん?って突っ込みたくもなったが。
この場面で敵のボスに、何でこんな無謀な戦いを引き受けた?と尋ねられたとき、マックイーン演じるヴィンの返した台詞がめっちゃカッコ良い。

こちらの方は「侍」と対応している登場人物が何人かいる。
みんな大好き”久蔵”に当たる人物を演じているのがジェームズ・コバーンで、こちらもなかなかにカッコ良い。
ただ三船の菊千代にあたる若造くん(ホルスト・ブーツホルツ)がやや弱いかな?単体で見れば悪くないはずが、菊千代の強烈さには負けてしまう。

七人のキャラクターも個性派ぞろいでこっちも良いです。
何より当時、新人だった彼らが他の誰より目立ってやろうとギラギラ演じていたらしく、野郎どもの演技のぶつかり合いが光ってますなぁ。

この映画は元の「七人の侍」が素晴らしかったのもあるけど、気の利いた台詞が多い。含蓄あるものや思わず唸るようなものもあって、西部劇といった枠を超えた普遍性を持っている。
アメリカ人の考える侍や浪人の精神性を体現しているような七人ですな。

こちらも最後には農民が勝利する。
劇中でブロンソン演じる男が本物の勇気とは何か?を子供たちに説くシーンがある。それがこのラストの台詞に繋がって効いてるんやな~と思った。
ここが実に素晴らしくて、日々変わり映えのしねぇ仕事や家事を繰り返している人々の応援歌にもなる。
明日からまた頑張ろうかい!って気にさせてくれるね~。

ショボいリメイクが多い中、これは流石に50年以上経った今でさえ名作と言われているだけはある。
改めて観ても素晴らしい。
ただ、比較すると「七人の侍」の方がずっと面白い事に気付いた。
あっちは七人の個性がもっと練り込まれていて、死人が出る度に悲しい気分になった。でも、荒野の~ではそこまでの感情へは至らなかった。
戦闘の戦術の緻密さや、見せ方もあっちに軍配が上がる。
(あくまでも個人的見解です)
こちらもすっごく良い作品なので、あれが傑作すぎたんやな。
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