shibamike

背広の忍者のshibamikeのネタバレレビュー・内容・結末

背広の忍者(1963年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

人間が真剣に相手を打ち負かせようとするとき、自身の能力を高めることは当然であるが、それだけでは敵に勝てない。
いわゆる「情報戦」に勝たなくてはならない。
この情報戦というのは結局、"相手のことを熟知する"ということだと思う。相手がどんなヤツか分からずに無闇矢鱈と自己鍛練しても、巌流島における小次郎のように武蔵にやられてしまうであらう。

本作は、電機メーカーの情報戦に巻き込まれた弱小リサーチ会社の田宮二郎が大企業の非人道的活動に「畜生!許さねえ!綺麗な顔してすました大企業のどす黒い所を暴いてやる!」と待ったをかける社会派?映画。

映画の中で、電機メーカーのサラリーマン達がテレビ販売の独り勝ちをものにするため、相手企業にスパイを送り込んで、製品動向を探り合うという企業戦国時代模様を観ることができる。この"スパイ送り込み"は本当にあった事実なのか、映画だけの話なのかわからないが、自分の会社に競合企業のスパイがいると思うと、ちょっと楽しい。
「課長、~さん怪しいですよ…」「何っ?ホントかね、柴三毛くん!」とかいいじゃん。

自分も"背広の忍者"になりたいが、せいぜい"背広のチン毛"が良いとこであらう。
「む…!背広の肩にチン毛が…!」と敵軍に勘づかれ、即座にはたき落とされて終わりである。
というか最近、「背広」って言わないわね。みんな「スーツ」ね。アベック、ジーパン、衣紋掛け、ズボン、ズックあたりと同様に背広という言葉もおっさんワードになっているのかも。

映画の中身と関係ないけど、昔の映画(邦洋問わず)を観ていると、女性オペレーターが電話交換の仕事をしているシーンをよく見かける。
正直、めちゃくちゃやってみたい。
プラグみたいなのを素早くあちこちに差し込んでいるのであるが、単純に楽しそう。丸の内でブスブス一日中プラグを差し込んで、アフターファイブには六本木のクラブでIT社長達と飲み明かし、中絶を繰り返す。そういう乱れたOL生活を過ごしたい。

映画の中で、「4インチの小型テレビ」が登場し、物語の争点となる。"そんなに小さなテレビが作れる訳ない"ということなのだが、いざ世間に登場して世間が「ギャア小ちゃい!」とたまげる。
1963年の時点から半導体を用いた電気製品の小型化は始まっていて、小型→薄型→端末と製品は進化を遂げていくのだから、現代の我々にしてみれば当時の4インチが可愛く見える。自分は学生時代、先生から「電気製品開発の宿命は省エネと何?」と質問を浴びせかけられ、「わかりません。」と即答したところ、「小型化ね。やる気ないんだったら帰っていいよ。」とサクッと叱られたことを思い出した。あんの先公の野郎うううう!

映画終盤に田宮二郎と後輩が電機メーカーの秘密工場に"消防点検っす"と身分を偽って侵入するシーンがある。ここは雑だと思った。企業機密管理はそんなに杜撰ではないであらう。

製品の発展・進化も、お客の過剰な需要も、サラリーマンの仕事量も、何もかもほどほどにして、みんな楽しく暮らしたらいいのに。
六本木のタワマンでIT社長達と乱交しながら、夜景を見下ろしつつOLの私は思う。

にんにん!ドロン!
shibamike

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