Foufou

チャルラータのFoufouのレビュー・感想・評価

チャルラータ(1964年製作の映画)
2.8
お口はすっかりフェリーニでしたので、選択間違ったかも……と思ったのも束の間、思いがけず良き作品でした。

最短で要約すると、チャルラータという娘が小説を書き出すまでの物語(そこからまだ紆余曲折ありますね)。娘とは言い状、新興の新聞社の創業者にして編集者の壮年の男に嫁いだうら若い女で、子どもはまだない。使用人を何人と抱えるいい暮らしをしていて、無聊を託ちながら日々を過ごしている。小説を読むのが彼女の唯一の慰めで。

そこへ大学出たての夫の従弟が現れて、これが流麗なる筆致で詩なんぞ書くものだから、やがて妻はよろめいて……。

「よろめき物」ですが、そこはサタジット・レイですからあくまでプラトニックです(今や死後)。

白い紙にベンガル文字をすらすらと鉄筆で書いていくのがもう堪らないのです。アラビア文字もそうですが、まるで抽象絵画のよう。これは、一文字一文字を置いて書く東アジア文化圏の我々にはかなわないことで(あ、でも草書なんかは負けてないか)。こと、従弟は達筆で、読めなくともそれが素晴らしい詩だとわかるくらいなもの。

見せ場は色々ある映画ですが、「精神の不貞」の描き方は今となっては古すぎるというか、コテコテです。思わず見つめあっちゃうとか、女がブランコに乗りたがり男がその背を押すとか、女が男に履き物をプレゼントするとかエトセトラ。

あと、あの噛みタバコっちゅうの、なんなん? 噛みタバコ、やってみたいんですけど。「ちょっと、あなたのはライムが多すぎる」とか言って、ハート型の大きな銀の入れ物持ってきて、蓋を開けると中にさらに小さな銀の蓋つきの入れ物が収まってて、蓋を開けては何やら摘んで葉の上にのせ、また別の入れ物開けては摘んで葉の上に乗せ、その葉もまたちょっと濡れてる感じなんですけど、これを小さく折りたたんで意中の異性の口に押し込むって……素敵過ぎるんですけど。

タバコはとうの昔にやめたけど、紙タバコはどうでも、葉巻やパイプは今でも心底うまいと思ってるし、インドの噛みタバコとかいうの、これやってみたいし、なんなら水タバコだってやってみたいといつだって思ってる。
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