ワンコ

E.T.のワンコのレビュー・感想・評価

E.T.(1982年製作の映画)
5.0
【発想の転換】

※スティーヴン・スピルバーグIMAX映画祭

スティーヴン・スピルバーグの映画「未知との遭遇」で『第三種接近遭遇』という言葉を知り、更に映画「E.T.」には日本での公開前からわくわくが止まらなかったことを思い出す。

映画はアンチ・テーゼ的な手法を取ることは多い。

ベトナム戦争や凡庸な政治家の振る舞いなどを暗に批判するような映画はあるし、時代の雰囲気を批判的に描くこともある。

スティーヴン・スピルバーグのこのSF2作品は、人間の嫌なところや争いを止められない様を要素として取り入れながらも、直接的な批判対象とはせずに、ありがちな勧善懲悪ストーリーは排除して、未知なるものとの遭遇を通して多様性を追求した秀作だと思う。

この2作品が公開された時期は、ソ連がアフガニスタンに侵攻し、泥沼だったベトナム戦争の悲劇を世界がトラウマのように思い出した頃と重なる。

映画は多くの賞にノミネートされたが、その発想の転換ともいえる設定や展開について行けず、世界中で驚異的な大ヒットになったにも関わらず、”子供向け”などと評され賞を逃した逸話の残る作品だ。

『E.T. phone home』は名セリフだ。

E.T.とエリオット少年が指を合わせるシーンは、バチカンのシスティーナ礼拝堂にあるミケランジェロ作天井画”人間の創造”と重なる、教養が試されるシーンでもある。

これを観てハッとした人も多いはずだ。

分断のぎすぎすした状況の中で生きる僕たちや子供たちが今こそ観るべき作品ではないかと思う。

人間社会には今発想の転換が必要だ。
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