Ryoko

ポエトリー アグネスの詩(うた)のRyokoのレビュー・感想・評価

4.7
イ・チャンドン監督はやはり天才。
農村の川辺で遊ぶ子どもたち、川上から流れてくる白い物体。それが少女の死体だと判明するや否や、無音で浮かび上がる映画タイトル「詩」。鳥肌が止まらない。
孫と2人で暮らす老女。昔褒められたことがあるからと始めた詩。アルツハイマーに冒されながらも美しいものを詩にしたいと考えるが、詩を綴ることで見えてくるのは酷い現実。現実に向き合うとわかるのは自分は美しい人間ではないということ。確実に自分も加害者の側に含まれているということ。事なかれ主義でおそらく純粋無垢であった彼女はどう受け入れるのか。ラストシーンが暗示しているものを深く考えるとまたしても鳥肌が止まらなくなる。
人生の美しさと哀しさを訴えかける本作。小さな世界で生きていた子供の頃のキラキラとした思い出。何十年の人生を生きてきてだんだんと曇っていく心。美しいものが見つけられにくくなる。それでも光を見つけながら愛おしみながら生きたい。
イ・チャンドン監督作品は哀しいお話を見せながらもどこか心の淀みを流してくれているような気がしてならない。
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