<概説>
ソ連派とロンドン派が衝突する終戦後のポーランド。ロンドン派に属する青年はその社会運動の中で、喪われたはずの愛という生き甲斐を見つけることになる。アンジェイ・ワイダ監督『抵抗三部作』の第三章。
<感想>
あの惨禍の中でなにかを為しとげられるのか。
作戦を見届けようにも許されません。
暗殺を完遂しても放浪は終わりません。
息子を見つけても再会は果たせません。
愛を見つけてもそれは成就しません。
作中主要人物のだれもかれもが何もやりとげることができずにいて、そんな苦悩を知らないブルジョワ階級がなんとも憎らしい。
しかし最後まで作品を鑑賞すると、むしろ彼等の方が目的すらも見つからない悲劇の主人公のようでもあります。
そして彼等の大義が語られないことでますます「この戦乱に意味はあるのか」という虚無感が充満することに。大義をになう立場の人間ですら、大義の中で迷い子になっているのだからどうしようもありません。
露骨なまでの反戦描写はありませんが、むしろそのなにもなさこそが胸に来る。独特な意義のある美しい作品でした。