みかんぼうや

蒲田行進曲のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

蒲田行進曲(1982年製作の映画)
3.7
【パロディで幾度となく観てきた階段落ちの本家本元。軽すぎる昭和ノリに驚くも、噂に違わぬヒロイン松坂慶子の存在感が圧倒的!】

伝説の階段落ちや「俺のコレがコレなもんで!」は、小学校の頃からバラエティ番組でパロディされているのを何度も見ていました。なので、どんな内容の作品かも知らないのに、“銀ちゃん”や“ヤス”などのキャラクターもしっかり知っているし、もちろん使われている音楽の多くも馴染みがある。しかし、なぜかオリジナルを観ようとは思わなかったのですよね。が、レビュアーの皆さんが高めの点数をつけられていたので、背中を押されてようやく観ることができました。

なんでしょう、「仁義なき戦い」はもちろん、先日観たあの重々しい反戦映画「軍旗はためく下に」を製作した監督と同じ監督の作品とはとても思えない、軽いノリにまず驚かされました。映画というよりは昭和のテレビドラマ、いや、もっと言うと、やたらとワチャワチャした無鉄砲なノリ、リアリティのないありえない展開、いかにも台詞っぽいわざとらしく大げさな演技から、もはや壮大なコントを観ているような感覚。ある意味、深作監督の振り幅の大きさを感じつつも、あまりにライトな作りに中盤まではだいぶ戸惑いを感じていました。

が、気づけばこのノリに慣れていて、昭和エンタメとして楽しめているこの不思議。分かりやす過ぎる展開、オーバー過ぎるリアクション、なぜヤスがあそこまで銀ちゃんに惚れ込んでいるかもイマイチよく分からない(昭和の弟分たちを可愛がるスターなのでしょうが、作品だけだとそのの魅力がイマイチ伝わらないので)。なのに、この“昭和のお決まり感”は妙に痛快。

小難しい作品や深く考えさせられる作品を欲していた20年前に観ていたら、かえって「なんだこの大げさでリアリティのない映画」くらいで切り捨てていたかもしれないですが、この歳になると、こういう昭和の脂身満点な単純で大げさなお決まり感満点の作品が逆に味わい深くなった気がします。

何はともあれ、有名な階段落ちも見られたし、どんな映画かも分かって良かったです。が、最大の収穫は、やはりヒロインの松坂慶子。魅力的過ぎます。前半は色気に溢れ、後半は可愛らしさもあわせ持つ。本作の松坂慶子の魅力が凄いことはどういうわけか子どもの頃から刷り込まれていましたが、実際にそれを観て実感しました。今まで観てきた邦画のヒロインの中でも指折りのチャーミングさ。演技は随分オーバーだし、登場時と後半のキャラ変が凄まじく、人物像としてリアリティのかけらもないんですけどね。

普段観る昭和邦画とはタイプの異なる、脂ギッシュなコテコテ昭和エンタメ作品、思いのほか堪能できました。
みかんぼうや

みかんぼうや