青山

狂い咲きサンダーロードの青山のレビュー・感想・評価

狂い咲きサンダーロード(1980年製作の映画)
4.0
大学生の卒業制作でありながら、先日出た映画秘宝ATBにランクインするなどカルト的な人気を誇る作品です。

ストーリーはシンプルです。新道交法制定に伴い、暴走族グループたちが、片や「警察と仲良く愛される暴走族」を目指すエルボー連合(なんじゃそりゃ)を作り、片やスーパー右翼(なんじゃそりゃ)"国防挺身隊"に合併しと、二分していく近未来の日本で、"魔墓呂死"の特攻隊長・仁がどちらの権力にも靡くことなく最後まで単身ツッパリ続けようとするお話。

学生映画らしく演技や編集の素人っぽさはありますが、その分、わけの分からない熱量も物凄いです。だってもう公式のコピーが「ロックンロール・ウルトラバイオレンス・ダイナマイト・ヘビーメタル・スーパームービー」ですからね!語彙が小学生かよ!

見始めてまずオープニングシーンにシビれます。
まずゾクの面々の格好が物凄くカッコいい。黒の革ジャンにリーゼントあたりはまぁカッコいいけど普通ですが、その中になんか口にトラバサミみたいなのはめてる人とかなんか顔を緑と赤に塗った人とかなんか大仏みたいなマスク被った人とか、"なんか変なビジュアルの人"がたくさん出て来て特に意味はないですがワクワクします。そんな格好で落書きだらけの倉庫で無駄にドスの利いた声で喋る人たち。ずっとあの喋り方してて疲れないんでしょうか。恐るべき体力です。
そして流れ出す音楽も男臭くてロックでかっこいい。泉谷しげるの曲だそうで、イマドキの若者なので、泉谷しげるといえば妖怪の漫画描いてる人とよくごっちゃになる怖いおじさんくらいのイメージしかありませんでした。こんなカッケえロックミュージシャンだったのか......。この泉谷しげる及びPANTA&HALというバンド(頭脳警察の人らしいです、初耳)の曲は全編に渡ってうるさいくらいにずっと鳴っているのですが、そのうるささがこの作品の場合は邪魔にならないあたりズルいです。
またネオンライト風の文字で出るタイトルテロップもハイセンス!からの間髪入れずに抗争シーンに突入!この辺の冒頭のスピード感あるヒキが絶妙で、何のグループと何のグループがどうして戦ってるのかさっぱり分からないのにテンションぶち上がります。
オープニングのことだけで長々と書いてしまいましたが、オープニングが最高なのでその後も熱に浮かされたように見入ってしまったのでやっぱオープニング大事です。

その後の展開もまぁ人間関係はややこしいですが、要するに主人公が多数派に反抗してボロボロにされて復讐するというシンプルなものです。
凄いのは主人公がそこまで頑なに反抗する理由がはっきりと描かれないことです。楽しかった魔墓呂死での日々への愛着か、多数派への反感か、なんとなく意地張ってるのか、何なのか観ててよく分からないし、本人もよく分かってなさそうなんですよね。それが何ともリアルで、主人公の「よく分からない情熱」がそのままこの映画の「よく分からない良さ」とイコールになってる気がします。

なので、その情熱が行き着くクライマックスの戦いがやっぱり最大の見所です。
真っ黒なバトルスーツとヘルメットに身を包み、その辺のヤク中の小学生(なんじゃそりゃ)たちと手を組んで国防挺身隊のやつらに復讐するために最後の特攻をするんです。シビれます。
実はこの辺低予算映画なのでアクションの派手さっていうのは冷静に観るとそれほどでもないんですが(ゆーて学生映画であんなに爆発とかしてるの凄えっすけど)、なんせこっちももう冷静じゃねえんだ、テレビ画面から5cmくらいの距離に噛り付いて見入ってしまいました。
そして、ボロボロになった主人公の最後......興を削ぐので書きませんが、彼の最後が素晴らしいです。

また、ここまで主人公メインで書いてきましたが、全てが終わってから後日談のように出てくる魔墓呂死の元リーダー健さんのその後も、何とも言えない余韻を残します。

興奮して長々と書いてしまいましたが、実はもっと簡単に二言で言い表せる作品です。
「熱量が凄え」「いいからみんな観ろ」



余談ですが、「バトルロワイアル広場」「バックブリーカー砦」「デスマッチ工場跡」などの印象的な地名がテロップで紹介されるのがシュールで笑いました。
青山

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