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箪笥<たんす>のLzのレビュー・感想・評価

箪笥<たんす>(2003年製作の映画)
4.0
愛らしく不憫な姉妹の、恐ろしくも切ない夢幻的な映画。姉妹と継母の堂々巡りの確執から、地獄が開かれる。全員がさまざまな恐怖に苛まれて、そのどれもが最悪の道を辿っていく。

一つ一つの色が映える映像美の中で、黒い感情が蠢く対比。全員、自分の中で切実な思いを抱えていて、それがあまりに一つの場所で混じり合ってしまい、真っ黒になってしまった。個々の思いが切実だからこそ、結末が余りにも悲しい。

時系列が少し複雑な構成になっているけれど、それが不気味さと幻惑さを際立たせていた。自分もその世界の渦に巻き込まれて、一生あの瞬間から抜け出せなくなりそうだった。実際に、姉は、あの日のあの時間に閉じ込められてしまったんだろうな。幻のような映像の美しさが、更にあの儚い出来事の残酷さを際立たせている。

姉妹二人が素朴であどけない可愛さで、継母が凛とした美しさなのが、“女性”が抱える二極化された性質や心情の厄介さを実感する要素にもなっていて、芸術的だけれどそれだけでは終われない作品であることに拍車を掛けていた。

今でも、あのシーンで流れていた曲が、頭の中で鳴っている。
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