Mikiyoshi1986

ゲット・オン・ザ・バスのMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

ゲット・オン・ザ・バス(1996年製作の映画)
4.6
80~90年代のブラック・アメリカン映画に革命をもたらしたスパイク・リー監督の傑作ロードムービー!

ここ最近のリー作品は以前のような精彩を欠きつつあり、正直…あれ?って思う機会も増えたような気がしますが、
初期作品からこの「Get on the bus」まではとにかくキレッキレに冴えてて、現時点では彼の最盛期だったように思います。

ワシントンDCで開催される黒人による人種差別撤廃デモ「百万人大行進」に参加するため、
ロサンゼルスの多種多様な黒人たちが一つの長距離バスに乗り込み、6日間5000kmかけて会場ナショナルモールを目指す群像劇。

乗り合わせたのは運転手及び添乗員を含め、非行少年を手錠に繋いだ父親、病を抱えた老人、いちびった役者、破局寸前のゲイカップル、幼少期に父親を殺された混血警察官、元ギャングの改宗者、卒業制作でドキュメント映像を撮る若者など、実に様々。

道中ではそれぞれのやりとりを通して融和と衝突を繰り返し、
アフリカ系アメリカ人同士に介在する人種や政治、宗教、同性愛、男女差別、家庭、貧富、階級格差の問題など、彼らの日向も暗部も赤裸々にすることで、黒人の現状とヒューマニティーの所在を今一度明確にしてくれます。

実際に95年10月にこのデモを主導したファラカーン師はネーション・オブ・イスラムのカリスマであり、
KKKが白人至上主義ならば彼らは黒人至上主義に近い比較的過激な思想を有してるわけで、とにかくアメリカ社会におけるブラックパワーの急先鋒。
そんなストーリーを踏まえ、最後の彼らの選択はベタながらも素晴らしいシナリオだと思うし、
ラスト奴隷解放の父リンカーンに捧げる演出もオープニングシークエンスが一層効いて秀逸です。

最初から最後までイカしたブラックミュージックで彩ったサントラも最高。

アメリカ初の黒人大統領オバマからとって代わり、今年共和党のトランプが大統領に就任したアメリカ合衆国。
人種の隔たりよって世界が分断されぬことを願い、個々の尊厳が守られ、そして団結が成し遂げられますように。
Mikiyoshi1986

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