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黒い家のdeenityのレビュー・感想・評価

黒い家(1999年製作の映画)
4.5
ホラー映画でここまで高い評価をつけたくなる作品は珍しい。まあ一概にホラーと言い切れないのだけれども。サスペンスとも言えるだろうし、コメディやエロまで詰め込まれている。ただ終盤の追い込みに関しては間違いなくホラーと言えるだろう。

話の本筋としては保険金詐欺のようなことをしてお金を搾取しようとしている変な夫婦がサイコパスの疑いがあり、真相を追求していく。はっきり言って前半部分はやや蛇足が多く長く感じる。変な演出とか変な演技とか掴みどころがない。

とりあえず言えることはこの作品は変なのだ。主演の内野さんはムカつくほどのビビりっぷりを披露して演技の幅を見せていますが、変な夫婦を演じる西村雅彦と大竹しのぶ夫婦は演技まで変。一周回って下手なのかと思ったけど、まあ意図的なわけですな。特に大竹しのぶのヤバさと言ったら言葉を失う。いや、逆だ。悲鳴が出るレベルだ。「サイコパス」と言って思い浮かぶのは例えば『ミザリー』のキャシー・ベイツとか『シャイニング』のジャック・ニコルソンとか、そうそうたる面々が挙げられるが間違いなく本作の大竹しのぶはそれに匹敵する演技だった。終盤の圧倒的存在感は見事。

終盤の展開に恐怖する所以は全編としての変な見せ方に他ならない。それは夫婦の真人間を装い切れてない不自然な声色に始まり、画面に広がる極端なクローズアップも然り、焦点のブレも然り、色彩(殊に大竹しのぶの内面と対称的過ぎる黄色は言わずもがな)だったりバックに流れる音楽やノイズ音だったり、不安定なカメラワークだったり、その他諸々の違和感を感じる演出が禍々しいほどの不安感を生んでいる。
最初自分はそこに理解できていなかった。だから変な違和感ばかりを感じていたが、知らぬ間にぐいぐい引き込まれていた。各演者の芝居だけに限らず、その監督のこだわりぬいた演出が結びついた傑作だと思う。
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