こたつむり

大誘拐 RAINBOW KIDSのこたつむりのレビュー・感想・評価

大誘拐 RAINBOW KIDS(1991年製作の映画)
3.8
♪ きっと 死ぬまでギリギリなんだ
  愛を頼りながら
  寂しい夜をのりこえてゆこう

ぶっちゃけた話、冒頭30分は退屈でした。
地に足がつかない演技(特に風間トオルさんの関西弁)と平坦な展開は、瞼と瞼が仲良くするに十分。一時停止に何度も指が伸びたのですが…。

樹木希林さんの登場で物語に色が付き。
そして、緒形拳さんでググっと締まる映像。
ははあ。これが名優の力なのですねえ。
存在感だけで物語に緊迫感が生まれ、リズミカルに疾走し始めたのです。

だから、そこからはググっと前のめり。
それに緩い序盤で十分に“タメ”を作ってありますからね。グングンと加速度を増す展開が心地良く、コミカルな演出が適度に刺激的なのです。なるほど、多分すべては計算づく。さすがは岡本喜八監督ですね。

何よりも素晴らしいのは“悪人”が居ないこと。
誘拐犯も、警察も、身代金を用意する家族も全員前向き。負の感情を描かないから、湿っぽい場面でも泥濘に足を取られません(な、泣いてなんかいないんだからね!)。

また、特筆すべきは“異形を演じたら天下一品”嶋田久作さんのコミカルな役割でしょう。プリンをずずっと食べる場面からして見事な限り。この作品の方向性を顕現した立ち位置でしたね。

ただ、正直なところ。
最後まで北林谷栄さん演じる《刀自》に“獅子の風格と狐の抜け目なさとパンダの親しさ”を感じることは出来ず。やはり、80歳を超えて“未だ現役”を演じるのは難しい話ですね。

まあ、そんなわけで。
平成の作品なのに昭和の味付け満載の物語。
とてもふんわりとした手触りなので、サスペンス要素に期待すると肩が下がると思います。オススメは人情に寄り添うに鑑賞スタイル。つまり「ほっこり」が大切なのです。
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