真田ピロシキ

大誘拐 RAINBOW KIDSの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

大誘拐 RAINBOW KIDS(1991年製作の映画)
3.8
子供の頃にTVで見て面白かった記憶のある映画。面白いにも色々種類があるけれど、この映画はあれこれ考えるまでもなくフツーに面白いと言える類の誘拐コメディ。この頃の岡本喜八と言うと前後にヘンテコ時代劇の『ジャズ大名』やヘンテコ西部劇『EAST MEETS WEST』(見たことあるはず)を撮っており娯楽性に振り切ってた時期。本作はそれらのようにキテレツではないが、大物監督より中堅程度の人が手がけそうな題材をちゃんと面白く仕上げているのが流石。感性が古びていない。

3人の若者に誘拐された大富豪の老女が主導権を握り100億円の身代金を要求するというストーリー。このおばあちゃんの強かさは無茶要求の解決を通じてバラバラだった子供達を結束させる賢き母としての面と、死後を見据えて近い将来自分の山を奪う国へ復讐を果たしてやろうとする反骨心にある。後者は戦争で3人も子供を奪われた恨みも重なっていて、従軍経験のある岡本喜八が映画化するに当たって重要視した点だと思う。そんな大それた発想を抱くおばあちゃんは気性は穏やかで慕う者の多い人畜無害な女性。この点が逆に原作者や喜八からの権力者に対する「普段反権力を叫んでなくても従順じゃないんだぞ。民間人舐めんな」というメッセージに聞こえた。娯楽性がとても高いが芯となるテーマは垣間見える。八方丸く収まり過ぎなのは怒れる老女が描いたメルヘンと受け取るべきなのでしょう。

県警本部長を演じているのは緒形拳。たまに緒方直人に見える。流石親子だ。怪優というイメージの強い嶋田久作がちょっと抜けた刑事というのも今となってはあまり考えられない役どころ。主役の北林谷栄は30代から老女役を演じてたそうでキャスティングの時点でこの映画は成功してたのかもしれません。老人としての年期が違う!