KSat

炎の人ゴッホのKSatのレビュー・感想・評価

炎の人ゴッホ(1956年製作の映画)
3.7
伝道師になることを志す青年期以降のゴッホを描いた、初心者にも優しいゴッホ映画。

ゴッホ役のカーク・ダグラスもいいが、何といってもゴーギャン役のアンソニー・クイン!見た目がソックリだし、ゴーギャン以上にゴーギャンといえるほど、ゴーギャンのイメージを完璧に演じ切っている。

この映画の上手いところは、なんでこの二人がたった二ヶ月で同居をやめて絶縁したかが(史実はさておき、映画として)めちゃめちゃわかりやすく描かれているところ。

創作の根底にあるものが信仰心と己の激しい魂の表現にあり、シンプルな日常を描きつつも生活においては理想主義的で、激情家でありながらも基本的には紳士的で穏やかに振る舞い、強烈な色彩表現と厚塗りを用い、風の日でも夜中でも外で描きたがるゴッホ。

そもそも明確に創作活動そのものを手段ではなく目的として考えており、象徴主義的なテーマを扱いつつも生活は真面目で、クールに見えてかなりの皮肉屋かつ下品なまでに女好きな俗物で、カラフルだけど穏やかな色調と平面的な画面にこだわり、モチーフが屋外か室内かにはさほどこだわらないゴーギャン。

これでは上手くいくはずもないだろう。こんな二人に付き合い続けるテオはつくづくいいやつ。

想い人だった従姉妹のケイに会わせてもらうために手を火にかざして火傷する有名なエピソードも再現されてるけど、果たしてこれは実話なのかな?

前半はゴッホ初期の絵画同様の抑えた色調なのが、アルルの部屋で窓を開けた途端に明るくなるのは巧いと思うし、アルルのカフェの場面はとても印象的。しかし、映画全体の色彩としては、ゴッホの絵には劣ってちょっと地味なのが残念。
KSat

KSat