せっ

エドワード・ヤンの恋愛時代のせっのレビュー・感想・評価

4.0

90年代、台湾で1件満ち足りた生活を送っているように見える若者たちのある2日間を描いた群像劇。

思ったより会話劇で、冒頭いきなり孔子がどうとかいう小難しげなテロップと芸術家による謎の芸術論に、主要登場人物が次から次に現れて早口でごちゃごちゃ喋るから軽く脳内パニックになったものの、概ね寂しさを紛らわすためにあたふたする若者たち滑稽だねって感じの話だった。

みんなずーっとゴチャゴチャゴチャゴチャ喋ってるけどほぼ本心を話さない。話してないちょっとの間だけが本心のようなものが見えるのが面白かった。

途中モーリーの姉と別居中の旦那が芸術論的な言い合いをするシーンがあって、これがヒット作を何本か撮ったあとの監督がよくやる(と勝手に思っている)分裂する監督の中の2つの自分ってやつなのかなと思った。愛だの恋だの明るいテーマの作品か、現代問題や哲学を入れ込んだ重いテーマの作品か。

それが登場人物たちにも反映されてる気がして、単純に自分の感情や思いで動くキキやモーリーの姉に対して色んな腹の中を抱えながら頭で考えて上手く世渡りしようとするフォンやその夫、そしてその間でもがくモーリー、アキン、ミンって感じがした。

最終的にそれぞれの愛を見つけて、今作では明るい未来を願う方が買ったんだなと思った。豊かさの代わりに何かを失ったけど、それはもう一度取り戻せるって感じかなぁ。

全然関係ないけど、去年東京国際映画祭で見た『家族ゲーム』も、豊かさの代わりに何かを失った日本で、一緒にいても全くバラバラな方を向いている家族を描いたことを思い出した。
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