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エドワード・ヤンの恋愛時代のkabcatのレビュー・感想・評価

3.8
未見の作品がついに4Kレストアされ、ワクワクしながら観始めたが冒頭から登場人物たちが目まぐるしく変わってそれぞれがけたたましくセリフのやり取りをするシーンが連続して面食らった。業界を舞台にセレブな男女やその同級生たち、またその恋人や婚約者たちがオシャレな生活をしながら、惹かれ合ったり離れたりを繰り返す(それもたった2日間の話)‥これはまるで「月9」のラブコメではないか(監督はウディ・アレンを意識したそうだ)。『クーリンチェ』を撮った後にこの作品とは‥と監督の振り幅の大きさに半ば困惑しながら前半を観ていた。

それが時間帯が昼から夜になると、監督ならではの光と影を駆使した美しい暗い映像が連続してさすが、と感じた。プールサイドのモーリーとチチ、小説家の部屋でのチチ、モーリーとミンの路地のシーンなどはうっとりするくらいの美しさだ。そして終盤に近づくにつれて次第に男女間の怒鳴り合いも少なくなりそれぞれが省察モードに入り、決断を下す。まとめ方も素敵だった。

94年制作ということもあり、バブルの名残を感じさせるボディコンシャスなファッションやシャネルやポルシェというゴージャスなアイテムが溢れるなか、チチの髪型にオードリー・ヘップバーンへのオマージュが如実に表れている。方やモーリーのキャラクターは『ニキータ』を踏まえているのかな?(90年作だから監督が観ていてもおかしくない)。ショートカットに黒いピタピタのミニワンピースとピンヒール、強気な性格にアンヌ・パリロー演じたヒロインのイメージが重なりました。
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