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復讐するは我にありのkekqのレビュー・感想・評価

復讐するは我にあり(1979年製作の映画)
4.1
実在の殺人鬼をモデルにした、暴力とセックスと生命力のドラマ。昭和というのはこんなにもイカれた時代だったかと錯覚するほど全員の倫理観がガタガタで、生き方も殺し方も全てが陰鬱で見苦しい。

映画史の何を知っているわけではないが、この作品まで連綿と受け継がれた日本映画の哲学をギュッと凝縮したような濃厚なエネルギーが感じられ、あらゆる画面の妥協の無さが凄い。

ここまで知恵が回って他人の心にも入り込める人間がなぜこのような凶行に及ぶのか、理解の範疇を超えた行動や衝動の連続は、"狂気"というものの底知れなさを見せつけてくれる。

他の映画とは一線を画す最初の殺人シーンの汚さも素晴らしい。突然あんなことされてもあれだけ抵抗できるのは、戦争というものがまだ体験として染み付いている時代ならではと感じた。平成を通過した私たちは明らかに弱くなっている。

筆舌に尽くし難い負のエネルギーに満ち満ちた作品。二回目見たら多くの発見がありそうだが、もう二度と見たいとは思わない。
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