中年2人が温泉に行って帰る話。
この尺と描写と台詞量でここまでのドラマが描けるのかと驚かされる一本。オーバー35くらいの男子はめちゃくちゃ共感できるので観ておいた方がいい。
ヒッピーを卒業した男と捨てきれない男、友であることは変わらないはずなのに、交わるほどに深い溝だけが顕になる。
この旅に至るまでに何があったのかはわからない、お互いを想う感情が友情なのか性愛なのか嫌悪なのかもわからない。
わからないのは説明不足なのではなく、観客がただその場に居合わせたようなリアリティを作り出し、想像の広大な余白を与えてくれる。
ひとつひとつのシーンに文学的な意味があるようでもあり役者がなんの指示もなくただ動いてるだけに見えるのも良い。絶妙な空気感は天才的で本当にずるい。
そして監督は音楽の力を100%信頼している。簡素だが豊かな音色が完璧なタイミングで挿入され、何でもないシーンに感動的なほどの彩りを与えてくれる。
と思ったら音楽ヨラテンゴだった。それは中年にとってド真ん中すぎるだろう。