ルーマニアを舞台にインフラとしての医療が腐敗しきるとどうなるかを見せつける壮絶なケーススタディ。
途中からドキュメンタリーを観ているのを忘れるほどダイナミックで緊迫感のある展開が凄まじかった(若干の演技はあるのかもしれない)。
ライブハウスの痛ましい事件から芋づる式に巨悪の巨悪ぶりが引き摺り出されていく。
その背景には政治システムの失敗と国民の国民としての思考停止があり、根の深さが半端ない。
悪を暴き世を是正するインテリ層と腐ったシステムから甘い汁を吸うインテリ層の静かな闘いが非常に不気味であり、大半の国民の関心の低さもリアルな不安を煽ってくる。
どの国でも起こることであり、私たちにとっても他人事ではない。政治に対して無関心で愚かな国民ほど管理はしやすく、為政者はそうなるよう仕向けることもひとつのテクニックですらある。
街角で拡声器を持って声高に演説するおじさんを直視できない私たちは本当に社会が見えているのだろうか？
とはいえあくまで知らない世界の知らない業界の一部を誇張した映画であることも事実であり、これを観てルーマニアの何かを分かった気になっても絶対にいけない。
