図師雪鷹

レッズの図師雪鷹のレビュー・感想・評価

レッズ(1981年製作の映画)
5.0
理想を追いかけ破滅していく男。
最後まで強さを失わない女。


『俺たちに明日はない』『天国から来たチャンピオン』のウォーレンベイティ が、製作・監督・脚本・主演の4役を兼任し、アカデミー監督賞を受賞した叙事詩的映画。
共産主義をテーマにした本作が、アメリカで作られたってのが非常に面白い。


この映画の主人公は、1917年のロシア革命について記した『世界を揺るがした10日間』の著者でありアメリカ人ジャーナリストのジョン・リードである。
資本主義を嫌っていた彼は、労働ストライキを擁護する記事を書いたり、第一次世界大戦を続けようとするアメリカ政府を社会主義者として批判していたりしていた。
その最中の1915年、彼は、ルイーズ・ブライアントという女性に出会う。彼女は女性解放運動に身を投じていて、自身も強く、そして自由な女性であろうとする。強く惹かれあったリードとルイーズ。ルイーズは人妻だったが彼女はすぐさま離婚し、2人はポートランドから、より自由なニューヨークに移住することになった。

だが、自由で強かな2人は、口喧嘩もかなり激しいわ、浮気をするわで…とにかく2人が喧嘩してるところは見てて面白い。世界を変えようという情熱を持つ男女は、色々な意味でオアツイのだ。途中、結婚したにも関わらず、怒ったルイーズは家出してパリに行ってしまう。

そんな中、1917年、ロシア革命勃発。リードはパリでルイーズを拾ってロシアに行くことに。社会主義者として、農民と労働者による政権奪取というのを、その地で体験しないわけにはいかなかった。

新しい予感に沸き立つロシア内。労働者の集会に行ったリードは、大勢のロシア人の前で、アメリカ人として自分の思想を語り、一瞬で彼らの心を掴む。そしてみんなで『インターナショナル』合唱。彼は、これを機に、ロシアの共産主義に傾倒していくことになる。

しかし、彼の破滅はここから始まった……


ソビエト政権を支持するあまり母国から嫌われ、なのにソビエト政権からは利用されるだけという、どちらにも相容れない状態になってしまうリード。一個になってしまった腎臓は彼の身体を脅かし、心身ともに蝕まれていく。もし、一度もロシアに行かなければこんなことにはなっていなかっただろうに…
自分の道を信じひたすら突き進んだリード。彼の思想はまた別として、憔悴していく彼の姿は悲しくてとても見ていられない。

そんな彼を救おうとするのがルイーズ。彼女の芯の強さは最後まで全くブレない。愛する男のために危険を冒して国境を越えていく彼女の勇気にかなうものはいないと思えたほどだ。

激動の時代に翻弄されていく2人の愛はどのように帰結するのかを確かめていただきたい。


この映画は、公開当時絶賛された映画であるにも関わらず、現在、知名度がかなり低い。それに3時間越えというものすごい長い映画だ。難しい単語はたくさん出てくる。正直自分は、理解できないところもあった。覚悟は必要かもしれない。
だが、この作品は、あくまでも共産主義者の物語ではなく、『歴史に翻弄される、強く生きようとした2人の男女のラブロマンス』といった視点で見てほしい。実際、リードとルイーズの互いを思う気持ちが、映画史上に残る、ある名シーンを作り出した。

あのシーンで、愛に競り勝つ思想は無いのかもしれないと思ってしまうほどだった。
図師雪鷹

図師雪鷹