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太陽を盗んだ男のmajiziのレビュー・感想・評価

太陽を盗んだ男(1979年製作の映画)
4.5
脚本や演出はめっちゃ強引なところがあるものの、熱量がすごい。
とにかく面白いものを作ってやるという意気込みが映画全体から感じられます。

まず原爆そんなに簡単に作れないし!笑
みたいなところからなんだけど、その発想すらも面白い。

あらすじは…
城戸誠(沢田研二)は普段生徒からバカにされてるような無気力な中学の理科教師だが、原子力発電所からプルトニウムを盗み原爆を作り、日本政府を脅迫する・・・


でも作ったはいいけど、何がしたいかわからない。
そもそも彼は原爆ラブで作ることが目的になっていたところがある。
だから作ったらその自慢のお手製原爆を誰かに見せたいという承認欲求につながる。

で、しょうもないことに初めの脅迫内容は、野球のナイター中継延長。
とことん彼の生活範囲を出ない域でしか、なんでも叶う願い事を使えない。

対日本政府なはずなのに、主人公の主義思想を色濃く出さないで、漠然とした不安や孤独に生きにくさを持つ人間のエネルギーを凝縮させたのが見事。

ここで安っぽいイデオロギーをつけてしまうと、単なる古臭い作品になっていたのでは。

ひたすら壁打ちしている姿。
落ちそうな屋上でのうさぎ跳び。
原爆作り完成の際の歌とダンス。
沢田研二の危うくも退廃的な雰囲気と、どんどん取り返しのつかないことになる様子が絶妙!

それからやっぱり山下警部を演じる菅原文太。
この作品ではいつからゾンビになったんですかってぐらいゾンビなんですけど、あんなに暑苦しい実直な姿はさすがとしか言いようがないぐらいでした。
いくぞー9番!


皇居前、国会議事堂での撮影、渋谷でのエキストラの数、首都高でのカーアクション、そして武道館をバックに屋上でのシーン。

多くの人が言うように、今これと同じレベルのものは邦画ではつくれないだろうし、そんな気概は持ち合わせていないように感じるのが、寂しいところ。

それにしても40年前の邦画で心躍るのは、とっても楽しい体験!
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