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太陽を盗んだ男のryoのレビュー・感想・評価

太陽を盗んだ男(1979年製作の映画)
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傑作。主題が既に面白く、テーマについてだけでも幾らでも書けそうだけど、何より画面に観客を最後まで引っ張っていく迫力と面白さがある。

高校の理科教師(沢田研二)が天皇に直訴を企てるバスジャック犯(伊藤雄之助)の狂気に触れ(狂気、というか日常を飛び越えてしまう強烈な意志や出来事に触れることで別の者の「狂気」が発現する、という描写はたまたま同時期に観た青山真治《ユリイカ》と共通する)、東海村原子力発電所からプルトニウムを盗み出し独力で原子爆弾を完成、バスジャック事件のおり共に生徒たちを救う前線に立って何かを感じた刑事(菅原文太)を窓口に指名し、日本政府と交渉を始める。しかし要求は野球のナイター中継延長やローリングストーンズ来日といったふざけたものばかりで…といったあらすじ。

原爆は誰でも作れる。この発想は脚本のレナード・シュレイダーがアメリカで実際に発行された雑誌の特集と、体内被曝者である長谷川和彦の生い立ちに(《ゴジラ》は1954年)ヒントを得て書き上げられたらしい。被爆国日本でこのアンチドラマを作るということの批評性。


1979年の非政治性。完成シーンのボブ・マーリー、原爆サッカー、猫の死、サラ金の取り立て(西田敏行)、プールに浮かぶ大量の死体。妊婦に化けて議事堂に入るシーン。
・ラジオというメディアの取り入れ方、描き方の巧さ。0(池上季実子)と9。
サイボーグ菅原文太。相米慎二と黒沢清。
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