レオピン

太陽を盗んだ男のレオピンのレビュー・感想・評価

太陽を盗んだ男(1979年製作の映画)
4.4
YAMASHITA あのメロディ 涙腺を刺激する 始発待ってる間にこれ聞いたら秒で泣いてしまう

邦画には珍しく人物のバックグラウンド説明をほぼカット。なのにこんなに感情移入させる。導入のバスジャックのシーンだけでもう舞台は出来上がり。あとはゴング

初めは健さんが候補に上がっていたという。ジュリーでよかった。スターとしての全盛期、殺人的なスケジュールをこなしていたからこそあの無気力な教師にピッタリだ。
時代はいよいよ高度消費文明社会へ。世の中はモノにあふれ輝きが失われ取り替えがきく社会に。動機なき犯罪の主人公にこれほどハマる人間もいない。

生きながら死んでいるのは町ではなくジュリー、いや城戸先生だ。城戸誠は既に死んでいる 幽霊のような人間だからこそ秋葉原や合羽橋で集めた部品でいとも容易く原子爆弾を作れてしまう。

城戸誠は人類史上最悪の大量殺人者となる男。神話的な人物。少なくとも国家に並ぶ人物。性格は分かりやすく言うとサイコパス 人の感情や痛みがまったく理解できない。
友人はいない 圧倒的孤独 特定のものにしか関心を示さない。  
頭がよく行動力はズバ抜けている 危機には強い 冷静な行動を見せる。
古くから見られる暗殺者像にも近い オズワルドタイプ。

いやだから、これおたくなんでしょ。職人的細部へのこだわりも私生活重視も。原おたくって55年生まれぐらいだから合致する。城戸誠は元祖オタクの中二病だ。おたくが体を鍛えだすというシュレイダーモチーフを忘れていた。ヒマだねあんた

久々に見ても屋上からダイブして電線に引っ掛かりバイーンとか、文太さんの爆破タイミング騙しうちキューとかやっぱ面白れー。山下刑事の熱と城戸誠の冷がしまいには入れ替わっていた。性も国家も人間もトランスしていく映画なのだ。

この作品どこを切り取っても完璧とかそういうのではない。完璧さからはほど遠い。終盤のカーチェイスはやはり不要にみえる。その代わりに込められた熱気 勢い アナーキーさ 映画作りは戦場そのもの そんなものを感じとれる。

ゼロと二人で どこまでもどこまでも 気がついたら東京湾まで そしてドボン
インベーダーゲームのピコピコ音を原発侵入のシーンにかぶせたり
奪還の際のターザンも 全てが適当でまた真剣 

こういう所がクリエイター心を刺激する。こう撮るかと思わせる。アニメ特撮方面にファンが多いのも納得。特に原爆製造マニュアルと化した中盤の映像の面白さ。やたらに長い。イエローケーキが出来上がるまで息をのむ緊張。手つきだけに集中して見せる。銀行強盗モノにも通じるものづくり映画の面白さだ。だからこその至福の缶ビール あの一杯 プシュ

時代が過ぎてもなお、城戸誠という人間だけは映画ファンの間でずっと忘れられない存在だろう。
クールの中に大変な熱を秘めた作品だ。

⇒エンディングテーマが沁みる映画ベスト級

⇒フィルターの色
城戸誠 うすいパープル
沢井零子(ゼロ) オレンジ
山下満州男警部 ノーマル
原爆製造中は パープルから緑 やがて白へ

⇒しかし不思議だな。東大出身でシナリオを書けて撮影所も知っているし何より喧嘩に強い。そんなゴジ監督が生涯2本って そんなわけない。一体何があったんだろう。
もしかして・・・御所の坂下門にバスで突っ込んだあのシーンが原因か。蛤御門に砲弾をぶっ放した長州に孝明天皇がキレたように、あれで祖霊の怒りを買ったのではないか。大分スピ入ってるがそうとしか思えない。 あっやべえ
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