シズヲ

太陽を盗んだ男のシズヲのネタバレレビュー・内容・結末

太陽を盗んだ男(1979年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

強烈に刺激的な内容、下手をすれば不謹慎とも捉えられかねないレベル。そんな凄まじい設定を全力投球で叩き付けてきた恐るべき傑作。「閉塞に満ちた日々を送る個人の暴力性が社会に向けられる」という内容はアメリカン・ニューシネマを彷彿とさせる。その上で緊迫したシーンやスペクタクルな場面も結構あって、娯楽作としても楽しめる。

沢田研二演じる主人公のキャラクターが本当に良い。いつも気だるげでつまらなそうで、何事にもぼんやりとしている。だけど内に抱える閉塞感を打破しようとする時だけ本当に生き生きとしている。滲み出る暴力的な虚無感にグッと来るし、彼自身が被爆者になったことも破滅性を顕著にしている。どこか滑稽な振る舞いもやたら好き。沢田研二と相対する刑事役の菅原文太も魅力的で素晴らしい。沢田研二がだらしないキャラクターだからこそ、生真面目な活力に溢れた菅原文太の役どころが良い意味で対照的に映っていた。

指向性のない狂気がとことん際立っている。原爆を作った主人公が結局何をするのか大して思い付かない場面がまさに彼の空虚さを示していた。最初に出てきたバスジャック犯が対比になってそれを強調していて、そこが本当に印象的だった。行き場のない衝動、目的のない狂気、閉塞を打ち破りたい漠然とした意思……そういったものがとにかく生々しくて、現代でも色褪せない凄みを持っていた。
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